三城×幸田・出会い編・10



予定通り、三城は翌日から仕事に追われる事となった。

この忙しさはそう長く続く物ではない。

せいぜい10日、上手く行けば一週間ほどで終わるだろう。

それなのに、当初の予定が大きくずれ込んで来てしまっている。

与えられている個室の業務室で一人、コーヒーカップを口元に添えて瞼を閉じる。

いつもの三城ならば、最も効率的な方法を選択出来仕事のミスは殆どないのだが、あの日以来、初歩的なたとえば誤字脱字といったようなミスを連発していた。

原因は解りきっている。

幸田の事が気になって仕方がないのだ。

男の話しの真相が気になるのか、幸田の安否が気になるからなのかは解らない。

瞼の裏の漆黒の闇に写るのは、最後に見た幸田の顔だ。

今にも泣きそうな顔をしている。

あの日から胸に巣くうモヤモヤとした気持ちが三城を苛んでいた。

とても鬱陶しい。

だからこそ早く仕事を全て片付けて病院に行きたかった。

行って何をしたい訳でも、言いたい訳でもない。

ただ、あの部屋にまだ幸田が居る事を確認したかった。

それなのに焦って空回りになりミスをし、また焦るという悪循環だ。

部下達に「三城さんらしくない」と影で言われている事も知っている。

この若さで手に入れた役職故に人の何倍も努力しなければならない。

舐められるのも蹴落とされるのもごめんだ。

その思いが更に劣悪な悪循環を招くのだろう。

こんな事ではダメだ。

瞼を開け、コーヒーカップをソサーに戻すと、大きく息を吐き気持ちを切り替え仕事に戻る。

その瞳には鋭い光が宿っていた。



 
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