三城×幸田・出会い編・11



なんとか仕事のペースを取り戻したが、ツケが溜まっていたためもあり当然のように残業だった。

会社からの近さを優先して購入した自宅マンションにたどり着き、取る物も取らず一人暮らしには広いリビングのソファーに深く座る。

「はぁ、、」

疲れから重いため息が漏れた。

ふと壁掛け時計に目をやると、日付が変わって数分が経っていた。

夕食は取ったが小腹がすいた。

どうせなら軽くアルコールでも、と思い重い腰を上げた時だった。

見計らったように三城の携帯が鳴る。

二つ所有する内の、仕事用の携帯だった。

こんな時間にかけてくる友人も居ないが、それ以上に仕事関係者ならなおさら居なかった。

部下達とはつい1時間ほど前まで一緒に居たので、この短時間で緊急事態が起きるとも考えれず、かかってはこないだろう。

三城は訝しく思いながらズボンのポケットから携帯を取り出した。

ディスプレーには「非通知」の文字が浮ぶ。

ますます解らない。

仕事用の携帯には仕事相手からしかかかってこないため、非登録者からの受信はほぼ無いのだ。

無視をするか。

けれど三城には何故か出来なかった。

立ち上がりかけた腰を再びソファーに沈めると、通話ボタンを押してふてぶてしい声で応えた。

「もしもし?」

「っ!三城さん?」

「幸田か!?」

息を呑むのを感じた後に聞こえてきたのは、切羽つまったような幸田の声だった。

思いもしない相手に、三城は呆然としてしまった。

何故幸田はこの番号を知っているのだろう。

そういえば初めて会った事故の日、身分証代わりに名刺を渡したな、と思い当たった。

「どうしたんだ?」

三城は酷く動揺をしていた。

今まで一回も電話などなかった。

それなのに初めての電話がこんな深夜だと何かあると思ってしまうだろう。

しかも切羽詰った声なのだ。

「いえ、、、その、、、」

かけてきたのは幸田の方なのに歯切れが悪い。

よほど言いにくい事なのだろうか。

まどろっこしさを感じながらも三城が電話を切れずにいると、受話器の向こうから微かな嗚咽が聞こえてきた。

「ぅっ、、くっ、、」

それを聞くと三城は反射的に立ち上がり、一言叫ぶと電話を切った。

「待ってろ、直ぐ行く」

アルコールを摂取する前で助かった、とタイミングの良さに感謝した。



 
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