三城×幸田・出会い編・13



明かりの点いていない月明かりだけが頼りの病室で、幸田はいつものようにベッドサイドの座っていた。

扉を開けた際の微かな音も、静まり返った深夜にはやけに大きく聞こえるもので気づいて顔を上げた幸田と入って来たばかりの三城が見詰め合う形になる。

三城は後ろ手に扉を閉め、黙って幸田の前に立った。

手を伸ばせば触れ合える距離になって、ようやく互いの表情が確認できる。

幸田は泣いてはいなかった。

「本当に来るとは思いませんでした」

目を細めて微笑む姿は、この月明かりそのもののようだ。

「俺が嘘をつくとでも?」

「そういう訳じゃ、、、ただ、こんな時間に駆けつけるタイプにも見えなくて」

緩く首を左右に振りながらに幸田は言い、柔らかな髪がパラパラと揺れた。

「俺だってそう思ってた」

ため息まじりに言った三城はわざとらしく肩をすくめて見せる。

「座りませんか?」

自分の隣をポンポンと叩いて示しながら、柔らかい口調で幸田が言った。

何も言わずに従った三城は拳一つ分をあけて幸田の隣に座る。

お互いを見るでもなく、それぞれ真っ直ぐに壁を見つめて沈黙が続いたが、居心地の悪いものでは無かった。

僅かに動いただけで触れ合える距離に幸田が居ると思うだけで、三城は至極安堵を覚える。

生まれて初めての感覚だった。

気持ちばかりが焦り無意味な理由などを探していたが、実際に幸田を目の前にするとスッと冷静になれた。

答えはここにあった。

理屈ではなく言葉に出来ない想いだが、それが何かはっきりと解った。

沈黙を破り、先に口を開いたのは幸田だった。

「いろいろ考えていたんですが、三城さんの顔を見たら、どうでもよくなりました」

軽く笑いを含んだ口調だったが、諦めではないようだ。

何故だかそれは前向きに聞こえた。

そして、それは正に三城が今しがた感じたものと同じ事で、三城は目を見張った。

けれど、「考えていた事」は互いに違うのだろう。

躊躇いながらも三城は聞かずにはいられず、壁を見ていた顔を幸田に向け真摯に見つめる。

「何があった?」

やけに真剣な声だ。

「どこから話そうかな、、、えっと、僕、ゲイなんですよ」

三城の問いかけに、幸田は困ったように笑った。

自嘲気味な口調で呟き、幸田もまた三城の方へ顔を向ける。

肩が触れ合いそうな距離で互いを見つめあう。

「あぁ」

「こないだの件でばれてますよね。それでも今日、来てくれて嬉しかったです」

痛々しい声音に似つかわしくなくフワリと微笑んだ。



 
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