三城×幸田・出会い編・15



数日が経った。

しがらみの無くなった三城の仕事効率は格段に上がり、後5日はかかると思われていたものが3日で終わった。

人の評価なんていい加減なもので、「やっぱり三城さんは凄い」と皆が口を揃えて言った。

そのかわり、この中二日間というもの、病院にはもちろん行っていないし、電話もしていない。

それも早く全てを片付けて、心置きなく時間を作るために三城が頑張ったせいだ。

あの日の帰り際、その事を幸田にも伝えておいた。

だがその間の幸田の心変わりが不安だった。

勢いに任せた告白だったのかもしれない。

もしあの男が再び幸田の前に現れて、「結婚は止めた」と言えばどう転ぶか解らない。

そのためもあって、我武者羅に仕事を上げたのだ。





******************************





それはまるでデジャヴだ。

面会時間ギリギリの病院の廊下を三城は走らんばかりに歩いて行った。

幸田の病室から怒鳴るような声が聞こえてくる。

壁越しで何を言っているのかは解らない。

けれど今日の三城は躊躇う事無く中へと入っていった。

中に居る人物の目星がついていたからだろう。

好都合だ。

幸田が誰の物なのかキッチリ話をしたいと思っていた。

扉が開く音と共に浩二は振り返り三城を見ると、憎憎しげに顔を歪める。

「またお前か、、」

「それは此方のセリフだ」

鋭くにらみ合う視線がぶつかる。

何か言いたげな様子で幸田は二人を伺ったが、口を挟める雰囲気ではない。

「もう、幸田には関わらないでもらおうか」

「なんだと!なんの権限があってそんなっ」

「幸田の新しい男だと言ったら?」

「なっ」

浩二は瞬時に振り返って幸田をマジマジと見た。

ベッドサイドの定位置に座っている幸田は、怖いほどに真剣な面持ちで浩二を見上げている。

「あの日、浩二に結婚するって言われた日、浩二の事は僕の中ではもう終わってるんだ。」

静かにハッキリとした言葉は、怒鳴り散らすよりも恐怖を与える事がある。

そして今が正にそれだ。

「何、言ってるんだよ。あんなにベタ惚れだったじゃねーか」

「フッ、大した自惚れだな」

5cm高い所から降り注ぐ、三城の小ばかにした口調が決定打となり、浩二は「くそっ」と悪態を残して病室から走るように去った。

「覚えてろよ」とは言わなかったが、言っていても不思議で無い雰囲気だ。

頭の悪そうな男だった、まだ注意は必要か、と三城は浩二の出て行った扉を見つめた。

「三城さん、来てくれたんですね」

「あぁ、やっと仕事が片付いた。少しの間は大丈夫だろう」

当然のように三城が幸田の隣に座ったが、幸田もまた三城がそこに座る事を当然だと感じていた。

恐る恐る三城の手が幸田の腰に回る。

一瞬幸田の瞳は見開かれたようだが、すぐにゆったりと笑んだ。

「あの男の事は本当か?」

元々のプライドは山のように高い。

いくら幸田の前だとはいえ、本当に諦めたのか、とは聞けなかった。

「え?あぁ、はい。だって、、、、」

三城の真意に思い当たると頷き、言葉を一度切ると頬を少し赤く染めて恥ずかしげな笑顔を向けた。

「だって、一目ぼれしちゃいましたから」

天然か、計算か。

多分前者だろうが、そんな事を言われればコレ以上何も問えなくなる。

天使の笑顔とはこの事か、と三城の脳裏を過ぎり、思えば最初から幸田には敵わなかったと思い出したのだった。


【完】

+あとがき+

*目次*