三城×幸田・出会い編・4



看護士が三城を幸田の病室の中に進めたのは、空調の整っていない廊下よりは快適だと思ったのだろう。

けれど、いくら綺麗だとは言え狭い病室内で男の寝顔なんて見つめていたくない。

それが三城の本音だったが、母親よりも年上だろういかにも「おふくろ」といった雰囲気の看護士の勧めを断り切れなかった。

純粋な親切に弱いタイプなのだろうか、それとも実はマザコンだったのだろうか、と三城は自分自身にため息をつく。

なんとも「俺」らしくない。

相当疲れているのだろう。

本調子で無い事は何より自分が一番解っている。

日頃の疲労がどっと押し寄せ、重い瞼を閉じると顔を天井に向けるようにして壁に頭を預けた。

「はぁ、、、」

三城は何度目か解らない深いため息を吐き、ただひたすらに幸田の目覚めを待った。

さっさと話をつけて帰りたい。

今はもう午前3時近いんじゃないだろうか。

明日だって朝から会議があるんだ。

簡単に仕事を休める立場ではない。

たとえ休むにしたって部下に指示を回したりしなければならないから、昼まで寝過ごすなんて出来ない。

少しでも体を休めなければ。

このまま眠ってしまおうか。

そう思った時、微かな声が聞こえた。

「ん…」

タイミングが良すぎて、悪い。

病院ついて2時間、三城が病室内で待てと言われてから15分くらい経っているだろうか。

数度瞼を震わせて幸田が目を覚ましたのだ。

「、、、チッ」

渋々目を開けた三城は舌を鳴らし、元のようにちゃんと椅子に座り直した。

状況が把握出来ていないのだろう幸田は、半眼の状態でボーっと見知らぬハズの三城を見上げている。

幸い三城の悪態は届いていないようだ。

幸田の視線につられ、三城は相手を見返す。

思わず見詰め合う形になってしまったが、何故かなかなか視線を外せなかった。

目を開いたその顔はやはり綺麗だからだろうか。

点滴や輸血のお陰で顔色も戻り、初めて顔を見た時に受けた印象を更に強く感じた。

女性と間違う事はさすがに無いが、もし女装をさせたなら良い線までいくかも知れない。

そんなどうでもいい事が頭をよぎる。

三城は自分の思考にハッとし、小さく被りを振った。

シャンとしなくては。

そんな中も幸田の双方が三城に注がれている。

長い睫をしばたかせながら何かを言おうとしているのか口を何度か開閉させていたが、乾いた唇からは何も発せれず何を考えているのか解らなかった。

いや、思考が働いているのかも定かでない。

見つめると言うよりは眺められている感覚で、三城は酷く居心地が悪かった。

この沈黙が嫌でそそくさと立ち上がると個室の病室を出て行こうとした。

幸田が目覚めた事を看護士に知らせなければ、と思ったのはただの言い訳だろうか。

数分三城を支えていたパイプ椅子がギッと鳴る。

三城は振り返らず、幸田も声をかけない。

横開きの扉を押して部屋を出ると深夜の廊下をナースステーション目指して歩いて行った。



 
*目次*