画面の向こうの・・・編・09



帰宅した時から、三城の機嫌があまり良くないとどことなく分かっていた。

何があったわけではなく多分自分が怒らせたわけでもなさそうで、彼の不機嫌の理由は知れない。

だがどうやら、八つ当たりにされているのだろうとは薄々気がついた。

「あっ・・・は・・・・」

「あまり締め付けるな。辛いのは恭一だろ?」

「で・・・でも」

シーツの上で後ろから腰を持ち上げられた恭一は、力の入らない足を震わせた。

三城の口で愛され一度達し、彼の指で早急にアナルを押し広げられ、そして今、体内に彼の熱を納めている。

「だ・・・だって・・・だって、春海さんが」

「俺がなんだ?」

「は・・・あ・・・」

シーツに顔を埋めた恭一は、その横の布地を握りしめた。

口を開いて呼吸を繰り返すのが精一杯で、言葉よりも意味もなさない声ばかりが溢れてしまう。

飲み込むタイミングすら計れず口角から唾液が零れる恭一の一方、腰を掴む三城は悠然としたものだ。

ゆっくりと、恭一の中からペニスを引きずり出す。

体内を彼の逞しい雄が擦りあげると息を呑む快感だが、空となった内部に空しさを感じる前に、いささか早い動作でそれは押し戻された。

「ふ・・・ん」

「だから、締め付けるなと言ってるだろ。力を抜け」

「で・・・出来ないよ。だって・・・別に僕は・・・意識してるわけじゃ・・・」

強い快感が肌の内外を襲うから、もう恭一の身体の制御は利かなくなっている。

どこに力が入りどこに力が入らないのか、それすらも思い通りにならなずに、恭一はシーツに胸を押しつけた。

「は・・・はぁ・・・」

「良いのか?良かったら、良いと言え」

「い・・・いい・・・春海さん、気持ち、良い・・・」

「良い返事だ」

みっちりと三城のペニスを包み込んだアナルが、じくじくと疼く。

数え切れない程彼に愛されたそこは、ローションの滑りを借りて柔らかく解れている。

広げられる圧迫感を感じるのは挿入した直後だけで、後は快感の縁へと追いやられるばかりだ。

三城はただゆっくりと、じらすように腰を振るう。

じっとりとした刺激は、じわじわと身体を浸食してゆくけれど決定的な頂点へは届かず、快楽の中にもどかしさが否めない。

三城の指が悪戯に背をなで上げ、恭一の膝がたまらずに揺れた。

「は・・・春・・・春海・・・さんっん・・・あっ」

背中がゾクリと震え、今はもう些細な事にすら身体が反応してしまうようで、瞼を開けていられず強く瞑る。

すると閉ざされた視界では、更にシーツの触れ合いすら刺激となった。

「そんなに背中が良かったか?ここも随分濡らしてるじゃないか」

「あっ・・・あっ・・・やっ」

「嫌?何が嫌だって?」

腰を支えていた三城の片手が離れたかと思うと、それは宙で揺れていた恭一のペニスを掴んだ。

容赦なく、きつく握られるものだから、急激に与えられた刺激に呼吸すら奪われる。

快感というには鋭過ぎる。

苦痛と言うには甘すぎるけれど、あまりに強いそれに、瞼には耐えきれない涙が溢れた。

「は・・・はぁ・・・あ。だめ、だって・・・」

「そんなに、苦しいのか?」

「そ・・・じゃ・・・なくて・・・んっ」

「苦しくないなら良いじゃないか。そうだなこのままいくか?」

ペニスを握ったまま、三城は身体を倒す。

彼の胸が背に当たり、そこから伝わる心音が高ぶり続ける身体に後押しをする。

もう、どれ程も持ちそうにはない。

けれどこのまま終えてしまいたくはなくて、恭一はゆるゆると首を振った。

「は・・・春海さんも、一緒がいい・・・だから、離して」

ペニスを握られ続ければ何度も擦られない内に絶頂へ向かいそうだ。

けれど体内に潜む彼はまだ力強いままで、恭一が達したとしても彼は離してはくれないだろう。

首を捻ろうとしても叶わない。

震える声の恭一に、背後で三城が笑った。

「可愛い事を覚えたんだな。そんな風に言われては仕方がない」

「春海さ・・・・」

「ただし、リクエストしたのは恭一だ。俺がいくまで堪えろよ」

「あっ」

三城の手が、恭一のペニスから離れる。

しかし背に胸を合わせた三城は、後ろから恭一の耳へ唇を寄せるとそこへ息を吹きかけた。

耳は弱いのだと、三城はよく知っている。

むしろ、だからこそそうしたのだろう。

腰が震えて、刺激のなくなったペニスさえも快感が走っている錯覚に陥る。

何がどうなっているのか全てに気など回らなくて、堪えるように瞑る瞼からは涙が零れる。

シーツにしか捕まれない身体も頼りない。

そうしていると背から三城の温もりも離れ、彼は恭一の腰を抱え直した。

「安心しろ。俺もそう、長くは持たない。恭一が散々、煽ってくれたからな」

「僕は・・・そんな・・・」

「胸を、落としておけよ」

腰を、そして尻を持ち上げられる。

もはや力の入らないそこに三城の指の感覚がリアルだ。

ゆっくりと恭一の中からペニスを引き抜いた三城が、それを奥へと押し込む。

その動作を三度繰り返した時には、その速度は速いものへと変化していた。

「あっ・・・はっ・・・」

徐々にスピードをあげるストロークが、恭一から思考というものを失わせてゆく。

三城に何もかも奪われる感覚で、しかしそれは決して嫌ではない。

腰を抱き、身体を突くのが三城だから、何もかも差し出してしまえる。

「も・・・だめ・・・春海さん」

「・・・あぁ、俺もだ」

頭上の三城の切羽詰まった声を聞いた。

セックスの時にだけ聞ける、いつにない彼の声。

それを喜ぶ間は与えられず、最奥を一突きされたのを合図に恭一は体中を震わせると、シーツの上に白濁の熱を飛ばした。

久しぶりの性交は、久しぶりに全身へ疲れと甘さを得た。

体内が強く伸縮する。

それを制御する術など持たない恭一の内部に三城も証を放ったと分かったのは、耳元で彼が荒い息を吐いたからだった。




  
*目次*