画面の向こうの・・・編・23



三城が、持ち上げかけた煙草を灰皿に押しつける。

そうして両手を空にすると、ふと口元に笑みを浮かべながらネクタイを緩めた。

「あれの事は放っておけ。俺以上に恭一が気にする事じゃない」

「あれ、って。でも・・・」

「俺には、恭一が何を心配してるのかわからんな。問題はないと言っているだろ」

「そう、なんだけど。それは僕と春海さんの話で・・・」

「他に誰が居る?」

「・・・美咲ちゃん」

「くだらんな」

「くだ・・・・ぁ」

嘲笑を含む三城を眺める。

そうしていると、ふと戻った三城はあっさりと恭一の腰を抱き寄せた。

「あまりあの女の事ばかり言うと、俺が嫉妬するぞ」

「え?なんの事・・・は、春海さん」

「気にするな」

三城の唇が、耳元に添えられる。

そうしてそこへ息が吹きかけられたかと思うと、彼の両手が恭一のスラックスのベルトのバックルへと触れた。

耳は弱い。

甘い吐息と熱い息で腰が震えている間に、三城の手は手早く恭一のベルトを外した。

身体を捻り後ろを向いていた体制から、手をついた窓へと向き直る。

そうすると、その背に三城の胸がピタリと重なった。

「ここも個室だったと思い出した」

「で、でも・・・でも、会社だし」

「だが、今このフロアには誰もいないし、朝まで誰もあがってこない」

「そういう、問題じゃ・・・」

「万が一明るみになったところで、レイズさえ抑えれば問題ない」

「そういう、問題でもなくて・・・」

ならばどのような問題であるのか。

三城を納得させられるだけの答えを用意出来ないでいるうちに、彼の両手は簡単にスラックスのホックとファスナーをも外した。

「恭一は、俺に触れられるのが嫌なのか?」

「それも、違うけど・・・」

「まだここも柔らかいな。ん?やめて欲しいのか?」

三城の吐息が、声が、耳元から身体の中心へ駆け抜ける。

そうしながら恭一の好きな筋張った指で下着越にペニスを握られると腰が引けたが、すぐ背後から密着する三城によりそれも適わなかった。

三城の指が、ペニスを揉む。

包み込む大きな手が、知り尽くしたようにそうするものだから、平常心を保ち続けるのも容易ではない。

「春海さんの・・・意地悪」

「何を言う。俺なりの優しさと愛情表現だ」

「そんな・・・」

「嫌ならやめると言ってるだろ?どうする?」

「それは・・・」

ここはオフィスで、目の前はガラス張り窓で、東京の夜景が一面に広がっている。

いけないと、本心から思う。

けれど心で何を考えていても、三城の手の中に収まるペニスは、確実にドクリと鳴った。

「安心しろ、なにもここでこのままなどとは言っていない」

「春海・・・さん?」

「あのソファーなら、狭いがセックスをするには事足りるだろう。恭一も、興奮をしてきたみたいだな」

「・・・あ」

ここがどこでも、目の前に何があっても、触れているのが三城である事実は変わらない。

彼の手が、確実な刺激を送っている。

それを耐えられるほど出来た人間ではない。

下着の中でペニスが半端に立ち上がり、喉の奥から熱い息が漏れると、三城は恭一の耳元でふと笑った。

それが何かの合図だったのだろう。

震える膝でガラス窓にしがみつこうとしたが、三城の手は一瞬そこから離れすぐに下着の中へと滑り込んだ。

「やはり、もうこんなにも熱くなっている」

「そ、そりゃ、春海さんに触られたら・・・」

「俺が触ったら?それだけか?」

「それは・・・」

「冗談だ。あまり虐め過ぎても、嫌われたら堪らないからな」

「・・・それこそ、冗談だよ」

自信の固まりのような三城が、嫌われたら、などと言ったところで本心など感じられず、ならばやはりからかわれているとしか思えない。

すぐ近くで聞こえる軽い吐息が、身体の中心から外側へ痺れを走らせる。

一度強く瞼を閉ざすと、暗闇の中でよりリアルに三城の手を感じた。

「春海さん・・・本当に、人、来ない?」

「あぁ、来ない」

「本当に、その・・・春海さんは良いの?」

「良くなかったら触る訳がないだろ。俺だって、こんな状態で放り出されたくない」

「ぁ・・・」

グッと三城の腰が恭一の尻に押しつけられる。

そこに触れた熱は、熱く、そして強度をみせていた。

「愛してる、恭一」

「春海さん、ずるい」

「なんの事だ?」

「だって、そんな風に言われたら・・・」

拒絶など、出来る筈がない。

下着に包まれたままのペニスは、三城の手の刺激により形を変えてゆく。

胸で荒い呼吸を繰り返し、うっすらと広げた瞼の先では、夜景の明かりが美しく煌めいていた。

「恭一、ここでこのような事をしたのは恭一が最初だ」

「・・・ん」

「もちろん最後になる。不満か?」

「はっ・・・」

「恭一、愛してる」

三城の吐息が熱い。

いつのまにか下着とスラックスのずらされた下腹部が、外気に触れて震えた。

息があがり、胸が苦しくなる。

だがそれは、ただ快感から来るだけのものではない。

「ふっ・・・あ・・・」

ガラスに手をつき、腰が落ちる。

一人では支え続けられないそこを、三城がすかさず抱き留めた。

「このまましたいところだが、万が一ヘリでも通って恭一の痴態を見られたらたまらんからな。ソファーでいいだろ?」

耳元でささやかれた言葉に、恭一は言葉なく頷いたのだった。


  
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