■グリッサード・・・・10



萩尾が帰った後にもう一度踊った頃夏樹の携帯電話は鳴り、黒川の到着を知らせた。

手早く着替え、施錠をしスタジオを後にする。

お馴染みのファミリーレストランで夕食を済ませ黒川の部屋へ戻ったのは当然普段よりも遅い時間だったが、気分は良かった。

ソファーで一服しただけでシャワーを浴びた夏樹は、ベッドの上で黒川を待っていた。

シャワーから上がったまま、一糸纏わぬ姿でそこに横たわる。

枕を両腕で抱くようにうつぶせになると、上半身だけを捻り足元に立つ黒川へ顔を向けた。

彼もまたシャワー上がりで全裸だ。

「今日は随分積極的だな」

「仁、好きじゃない?」

「よく知ってるじゃないか」

「仁の身体に触りたいんだ。引き締まってて無駄な筋肉ついてなくて、バレエの身体じゃない身体に」

元々逞しい体格にしっかりと纏った筋肉。

夏樹とは違う、けれど美しい肉体美。

ふと笑いながら、上から下まで彼に視線を這わせた。

「それは誉めてんのか?」

「誉めてるよ。自分にない物に惹かれるし、バレエから離れたい時もあるんだ。それに、刺青にも触れたい」

「夏樹がバレエから離れたい?生活の一部なんだろ」

「そうだけど、いくら生活の一部って言っても、ベッドの上では食事じゃないもの食べたくなるじゃない?そういう事」

重ね合わせた足を、上になった方を少し曲げる。

股間の密着がなくなり、そこで形を変えていく。

彼の視線を浴びていると実感すると、夏樹のペニスは益々力をつけていく。

「俺を煽って。いやらしい身体でいやらしい事を言う。夏樹は恐ろしいな」

「仁、もう勃ってる」

「そりゃぁお前が全裸でそんな格好してるんだ。男として正常な反応だろ」

「うん。俺もだから。ねぇ、仁」

甘えたように彼の名を呼んだ。

すると彼は、ベッドの端に膝を掛け、夏樹の身体へのしかかった。

「俺は、夏樹の身体の方が好きだ。細いわりに筋肉がある。服を着ていたら折れそうに見えるくせに、脱がしてみれば鋼の身体だ。そのうえ、どんな格好も出来るくらい柔らかいんだろ?」

黒川の厚みがあり筋張った指が夏樹の脇腹を這う。

ぞくぞくする。

いやらしいのはどちらだと問いたい程淫靡な手つき。

それは下へと降りていき、夏樹の中心を通り越し太ももを撫でる。

まるで焦らされるようだ。

上へと引き返したその手は、室内灯に照らされる夏樹の尻へと向かった。

「仁はどんな格好を俺にさせたい?」

「そうだな。とびきりいやらしい、他の誰にも見せられない格好だ」

「たとえば?」

「上を向け、夏樹」

「うん」

黒川の手が骨盤に触れる。

片手が顔の横につき、両足が夏樹の両膝を囲うように突かれた彼の下で、枕を離し身体を反転させる。

見上げた先には熱い眼差しを向ける黒川が居た。

「夏樹のもんも立派になってるじゃないか」

「だって、仁がいやらしく触るから」

「それだけか?」

「ううん。俺が、興奮してるから。仁の下にいて、その身体見て、凄く興奮してる」

内股を撫でられる。

その上では夏樹のベニスが、黒い茂みの中で力一杯張りつめている。

早く触れられたい。

そして男らしく大きな彼の手で扱き上げられたい。

それを知ってか知らずか、彼の手はなかなかそこには触れず、太ももを撫でるばかりだ。

「ねぇ仁、早く、触って?」

「いやらしい格好にしてからだ」

「だから、どんな……」

「こうだ」

黒川が夏樹の膝の間に膝を突き直す。

そして触れた夏樹の太ももを横へと広げた。

「こっちもだ」

「さすがに、全裸だと恥ずかしい」

「だから良いんだろ。どこまで上がる」

「そりゃ、上まで上がるけど……仁」

促されるまま、膝を曲げて胴の側面に太ももをピタリとつける。

興奮が募り、羞恥心さえ興奮へと変わる。

「手、ついて腰を浮かせられるか?」

「出来るけど……」

彼の視線が突き刺さる。

それがまた、快感で。

シーツの上に投げ出していた手を、黒川が言うように後ろ腰に添える。

そして手と指の長さ分、腰を浮き上げさせた。

「本当にいやらしいな。丸見えだそ。尻の穴までな」

「言わなくて、良い……」

「そうか?この絶景を夏樹にも見せたいくらいだ」

「見たくない。それより、仁……触って?触ってくれないなら、足おろすよ」

「それは困るな。俺はまだ拝んでいたいんだ。それで?どこを触って欲しいって?」

したり顔の黒川が、太ももの裏側から尻にかけてのラインを撫でながら夏樹を見下ろす。

奥にも上にも向かえる手。

焦らすばかりのその手つきがもどかしい。

瞼が下がる。

細められた眼差しを黒川に返しながら、片手を茂みへと向けた夏樹は、上擦る声を上げた。

「俺のここ……ちんこ、触って?」

「本当に、夏樹はいやらしいな」

知っている。

そのような姿を黒川が望むから。

品のない言葉を好むから。

仕方がなくではない。

激しく彼に愛されたいと思うからこそ、夏樹の身体が、言葉が、自然とそれを選んでゆく。

黒川が好き。

誰よりも愛している。

そして愛される自分でありたい。

「でも、こっちも欲しい」

空いている手でアナルを広げて見せる。

獣のような眼差しの黒川が口づけを落とすのを、知らず内に物欲しそうに唇が半開きになった夏樹は待った。



    


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