GW最後の一日・編・8



回数もそこそこに開放した幸田の身体を、三城は腕の中に抱いていた。

全裸の身体からは彼の体温を感じ、それだけで頬が緩む。

常々幸田が愛しくて仕方が無い三城ではあるが、SEXの直後ともあれば尚更である。

「今日で休暇も終わりなんだな。・・・もっと恭一とこうしていたかった」

「仕事したくないの?春海さんにしては珍しい」

「そうだな、こんな事を思ったのは初めてかも知れない」

苦笑と共に呟きはしたものの、仕事をしたくない、と言えば正確ではなくただ単純に、このまま彼とこうして過ごせたら良いのに、と感じてしまっただけだ。

幸田と出会う前は、休暇を休暇として過ごす事もままら無かったというのに。

背中から抱きしめている幸田の髪に顔を埋めると、シャンプーの香りに混じり彼の香りを感じられる。

安堵感を感じるな、と思った時には無意識に指先は彼の乳首へと向かっていた。

柔らかい突起を悪戯に擽ると、幸田は甘えた声で身を捩る。

「春海さん・・・ダメ」

「何も大した事はしていない」

「そうだけど・・・」

「気にするな」

「ン・・・」

これからまた一回戦を繰り広げるつもりはなく、ただ幸田の身体を弄りたいだけだ。

甘く鼻を鳴らす彼の息が上がりきる前に三城の指はそこから離れていき、次に細い腰を撫で回したけれどそれには幸田は何も言っては来なかった。

「そういえば。春海さん、あの車・・・」

「なんだ?気に入らなかったのか?」

「ううん。とっても気に入ったよ。マイカーなんて初めてで凄く嬉しかった。けど、どうして車なんて高価な物、突然買ってくれたのかなって」

「俺が買いたいと思ったからだ」

「・・・それは答えになってない」

不満そうに声を尖らせる幸田に、三城は口元を緩めた。

からかった時の彼の反応が可愛くて、悪いと思いながらもついそうしてしまうのだ。

身体を弄らせていた手を止めると、両腕を幸田に絡めつけ彼の自由を奪う。

「俺が恭一に車を買いたい、と思いついたからというのは本当だ。その後、何故そう思ったのかを考え理由を探したくらいだ」

「理由?見つかった?」

「あぁ。一応な」

「何だった?」

「秘密」

「・・・やっぱり答えになってない」

誤魔化す為に笑って見せると、幸田は己を抱きしめる三城の腕を軽く叩いた。

そんな小さく不服そうな態度を取られたところで何のダメージにもならない。

言える訳がないじゃないか。

満員の通勤電車の中にやりたくない、帰りに同僚と飲みに行かれたくない、なんて。

三城が幸田に多大なる独占欲を持っているとは彼も気がついているだろうけれど、それ故のエゴを押し付ける為だなどと知られたくはなかった。

「・・・じゃぁ、あの車にした理由は?」

「ん?ただ恭一に似合いそうだと思ったからだ」

「赤も?」

「あぁ。若奥様と言えば赤だろ?」

「・・・何それ」

唇を眇める幸田は、耳元を僅かに赤く染めていた。

三城の告げた理由を半信半疑に受け止めたようだ。

「嫌か?」

「嫌じゃないよ。最初派手かな、って思ったけどそうでもないし。綺麗な色」

「そうか」

あの車を選んだ実際の理由としては、この程度のクラスならば幸田は萎縮せず学校に乗って行けるだろうと考えたからである。

自分の愛車と同等のものを贈れば、彼はきっと怖がって乗れないのではないか。

ならば価格的にも車体的にも小ぶりなあれにしよう、と思い当たったのだ。

三城にとって、国産の大衆車などそもそも選択肢に含まれていない。

ライオンのエンブレムが輝く車を運転する彼を見て、思い描いていた通りだと至極満足をしていた。

「そろそろ寝ろ。でないとまた襲いたくなる」

「それはちょっと困るかな。連休で遅寝癖がついちゃっていそうだし、それに明日は普段より早く家を出たいし」

「早く?」

「うん、学校までどれぐらい時間が掛かるか解らないから。マイカー通勤」

冗談めかしに声を揺らせてみる幸田は、やはり───

三城の腕に抱かれたまま幸田は長い睫を伏せた。

「おやすみ、春海さん」

「おやすみ、恭一」

なんとも充実した連中は終わりを告げた。

ルームライトを消そうと三城が照明のリモコンに手を伸ばすと、ふと壁に掛けられたフォトフレームが視界に映る。

「・・・・」

シルバーのフレームの中で微笑む幸田があまりに幸せそうで。

この笑みを守り続けなくてはならないな、と微笑と共に深く感じたのだった。





【完】



*目次*