三城×幸田・初めての・・・編・1



(元々ノンケだった人と付き合うのは初めてだ)

幸田は湯気を上げるコーヒーカップを見るともなしに見つめながら、物思いに耽っていた。

ここは都内にあるシティーホテルのラウンジで、7時に三城と待ち合わせをしている。

現在の時刻は6時を過ぎたばかり。

幸田の退院後初めて会うとあって、早く着すぎてしまったのだ。

それも仕方がないだろう。

退院の日からすでに10日程経っている。

三城は企業勤めのサラリーマンのため基本的に土日は休みだが、予備校で教師をする幸田は平日が休みだった。

そのため二人の休日が重なる事はなく、一番時間が取れるのが幸田の休みである金曜の夜から翌日の土曜の昼までという時間帯だった。

土曜の夕方には幸田は仕事に行かなければならない。

先週の週末は、幸田の仕事復帰への準備などで追われ、時間が取れなかった。

週に一度のチャンスが潰れてしまったため、再会は翌週の今日に持ち越されたのだ。

早く会いたい、、、。

自分だけ約束よりも早く来たって相手に会えないのは百も承知だが、待ち合わせよりも一時間も早く着いてしまった。

こんな事今までの相手ではありえなかった。

比べる事ではないのだろうがそんな想いが脳裏を過ぎる。

それは「ただ楽しみで」、と言う意味だけではない。

なぜならメールや電話は毎日のようにやり取りをしているが、相手の気持ちに対する不安はいつも持ち合わせていたからだ。

早く会って不安を取り除きたかった。

「ノンケ」という言葉が幸田に重く圧し掛かっている。

三城にとって幸田は遊びではないのだろうか、本当に今日来るのだろうか、実は指を指して笑っているのではないだろうか。

一人になるとつい後ろ向きな考えに捕らわれてしまう。

入院している時はまだ良かった。

3日と空かずに会っていたから。

女々しいな、と自分を叱咤し、随分と前に頼んだコーヒーが注がれたカップを持ち上げた時、幸田のポケットで携帯が震えた。

慌ててカップをソサーに戻して携帯を取り出すと、液晶には「三城」の文字が光っていた。



 
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