三城×幸田・初めての・・・編・2



着信はメールだった。

三城からのメッセージには、「予定より早く向かえそうだ」とあり、幸田の心を躍らせた。

了解したとの返信を終えると携帯をポケットに戻し、飲もうとしていたカップを再び持ち上げる。

平静を装うとしてもそわそわしてしまい落ち着かない。

まだ来るわけがないと解っていても入り口をチラチラと見てしまう。

コーヒーをチビチビと飲み、カップをソサーに戻し、また少し飲み、と何度も繰り返し、空のカップをうっかり二度ほど唇に運んだ所で幸田の胸は大きくドクンと鳴った。

ホテルの広いロビーの、雑多としている人波の中でも彼だと解る人影を見つけたのだ。

腕時計を気にしながら歩いている姿は、TVドラマから抜け出して来たようなエリートそのものだった。

仕事帰りの三城は当然の事ながらスーツを着用している。

病院に幸田の見舞いをしに来ていた時同様、身体に合わせたスーツをビシッと着こなしまるで隙が無い。

10月になったばかりの今はジャケットも着用し、更に威圧感を増させている。

ついその姿に見とれてしまい、幸田は顔が赤らむのを感じた。

三城のスーツ姿はお馴染みで、むしろ普段着姿を見た事がないが、逆に幸田がスーツ姿で会うのは初めてだ。

休日までスーツで過ごすほどのスーツ好きでもないし、むしろスーツは仕事着だという感覚があった。

だが三城がスーツで来るのは解っていたし、今日もいつもと同じように愛用のブランドの物を着用しているだろう事も解っていた。

そのうえ待ち合わせはシティーホテルのラウンジと言われたので、まさか普段着で来れる訳がない。

普段着でも、雑誌に載っているような店のハイセンスな物ならまだ良かったのかもしれないが、ファッションにあまり興味が無かったため箪笥に並ぶのはスーパーや量販店で買った物ばかりだった。

それを言うなら今着ているスーツもそうで、今日は三城を意識して持っている中で一番良い物を着てきたが、幸田の言う「良い」とは「高級」でも「カッコいい」でもなく、ただ「持っている中では一番新しくて綺麗」という程度だ。

もちろんこちらも量販店の物だ。

ネクタイくらいは、といつか何かの景品でもらった有名ブランドの物をつけて来たが、馴れないため着られている感が否めない。

ラウンジ内に三城が入り、軽く見渡して幸田を探している。

ドキドキと高鳴る鼓動が落ち着かないどころか更に速度を上げている気がした。

幸田を見つけたらしい三城が足早に近づいて来る。

何度も会いたいと願った愛しい彼。

「すまない、待ったか?」

約束よりも10分以上も早い時間なのに、先に来ていた幸田を気遣える三城に改めてカッコいいと思った。

しかしその気持ちは直ぐに忘れ去られてしまいとても後悔する事となる。



 
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