三城×幸田・初めての・・・編20



シャワーを浴び、こざっぱりとしてリビングに戻った幸田を迎えたのは、きっちりとスーツを着込んだ三城だった。

着てきたままのスーツで出かける幸田に気を使ったのだろうか。

いつもと同じく、全く気を抜いていない着こなしだ。

普段は隙が見えないほどビシッと纏めている髪が、今日は少し緩く感じられるのは、やはり休日だからか。

物言いたげな視線に気づいたのか、腰掛けていたソファーから立ち上がった三城はズボンのポケットに携帯と煙草を入れながらあっさりと言った。

「帰りに少し会社に寄ろうと思ってな」

こうした三城の一言を嬉しく思う。

突っ立ていても仕方が無いと、とりあえず家を出た二人はエレベーターに乗り込み地下へと向かった。

駐車場は地下らしい。

そういえば三城の車に乗るのは初めてだ。

きっと車も凄いのだろうと思ってはいたが、その予想は裏切らなかった。

車にあまり興味の無い幸田でも一目見れば解るマーク。

メタリックブルーが美しいBMWだ。

ピピッとセンサーキーで開錠する音が聞こえた。

「乗れ」

左ハンドルの運転席に颯爽と三城は乗り込んだので、追いかけるように幸田も馴れない右側の助手席に乗った。

新車独特の臭いがする。

早くもエンジンをかけている三城に、幸田はシートベルトをしながら声をかけた。

「新車なんですか?」

ゆっくりとスムーズに車は動き出し、薄暗い雰囲気の駐車場を走行する。

全く揺れを感じさせないのは、三城の運転テクニックか、車の性能か。

きっとどちらもなのだろう。

幸田の、三城に対する「何でも出来る男」というイメージがまた増した。

「あぁ、誰かさんのおかげで破損したからな」

嫌味たっぷりの口調に、幸田は慌てた。

今しがたまで忘れてはいたが、二人の出会いは交通事故だ。

泥酔状態のうえで起してしまった事故故、車の事まで考えが及ばなかった自分の浅はかさを恥じる。

「もしかして、僕のせいですか?すみません」

身体を捻り、運転席の方へ身を乗り出さん勢いで幸田は言った。

もしかしなくても自分だとは解ってはいる。

けれど幸田にはただ謝る事しか出来ないだろう。

弁償しろと言われても出来るはずがない。

「冗談だ。あの車に飽きていたところだったからな。修理もせずにすぐに買い換えたよ。」

先ほどの口調とは打って変わった声音が、「気にするな」と聞こえる。

危ないからちゃんと座れと言う三城の瞳は優しく、地上へ出た明るさと相まってとても綺麗に見えた。



 
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