三城×幸田・初めての・・・編21



「何が食べたい?」

と聞かれた幸田は咄嗟に

「牛丼」

と答えていた。

「牛丼、、、?」

「はい。出来れば吉野屋の」

出来るだけ怪しまれないように、ニコニコと笑みを湛えて三城を見つめた。

それと言うのも、へたに他の物を言えば、「じゃぁ上手い所を知っているから」とホテルやなんやのレストランに連れて行かれると思ったからだ。

その点牛丼なら、高級店もそうそうないだろうし(少なくとも幸田に想像は出来ないし)おのずとリーズブナルな所になるだろう。

そこで留めておけば良かったものの、一言余計に口が突いてしまった。

けれど今更仕方が無い。

言ってしまったものは引っ込めれないと諦め、窓から前方を眺める。

「あ、ホラ少し先にちょうどありますよ」

わざとらしいまでに嬉々とした声で言うと、三城がフッと笑った気がした。

「わかったよ、お前が良いなら俺はなんでもいいしな。」

胸が、トクンと鳴った。

どうしてこの人は、一言一言、心を揺さぶる言葉ばかりかけてくるのだろう。

それも、作ったようなものではなく、極自然に。

キザ、というのとも違う気がするけど、世間的にみたらこういうのをキザと言うのかも知れない。

そんな無駄な事を考えているうちに、先ほど幸田が指差した牛丼チェーン店の駐車場に入って行った。

BMWにそこは不釣合いな気もするが、気にしてたら何処へも行けないと思考を追い出す。

重い二重扉を押し開け、二人して店に入るとカウンターに座り、メニューを見もせず幸田は店員に向けて声を張り上げる。

「並、一つ」

「、、、、同じ物を」

三城の声がいつになく硬く、もしやと幸田は聞いた。

「もしかして、初めてだったりします?」

「まさか。学生の頃2、3度来た事がある」

という事は15年以上来ていなかったという訳か。

幸田とて毎日のように来ているわけではないが、一ヶ月に一度くらいは食べているかもしれない。

安い価格と安定した味それに24時間という営業時間故、帰宅が深夜になりがちな幸田には重宝しているのだ。

そりゃそうか。

三城ほどにもなれば自宅にいながらにして何とでもなりそうだ。

「すみません、、、」

悪いと思った訳ではないが、何となく気が引けた。

何に対する謝罪かは自分でもわからない。

「何を謝っている。お前が良いならどこでもいいと言っただろ。」

熱すぎるほどの湯のみを持ち上げ、三城は言う。

「お待たせしましたぁ!牛丼並2つ!」

威勢のいい女性店員が、トンッと音を立てて丼を二人の前に置いた。

「旨そうじゃないか」

そう言って、三城は割り箸を幸田に差し出した。



 
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