三城×幸田・初めての・・・編22



会計をきっちりと二人で別けた後、再び車に乗り込み幸田の家を目指した。

割り勘は、奢る奢らないの言い合いになりそうになり、ここでこんな話をしても恥をかくだけだと双方が折れた結果だ。

言い出したのは幸田で、三城は渋々納得したにすぎなかったのだが。

土曜の昼過ぎとあって道は空いており、目的地までそうかからないだろう。

幸田の家は杉並区にある低層マンションだ。

マンションと名はついてはいるがアパートと呼んだ方が良さそうな古びた雰囲気で、駅からの近さと家賃の安さを重視した、寝に帰るだけには十分な家だ。

三城も自宅を「立地だけはいい」と言っていたが、幸田のそれは決して謙遜を含んではいない。

あの豪奢なマンションとは到底比べ物にならないし、正直自宅に招くのを恥ずかしいという気持ちが無いわけではないのが、三城が幸田の家に来るのは初めてでない事もあって諦めはついていた。

退院の日、三城は仕事を抜けてワザワザ迎えに来てくれたのだ。

三城に会いたいがために用事を頼みまくっていた結果、入院中に荷物は思わず増えてしまった事もある。

結局はタクシーで帰るのに、その心遣いが嬉しかった。

だが家に着くと三城は、仕事途中だと言い玄関にも入らずに帰って行った。

一度「お茶くらい」と引き止めたのだが曖昧に笑って辞退されてしまった。

思い起こすとたった10日ほど前の事なのにとても懐かしく感じる。

いや、もう11日前なのか。

今日はどうなのだろう。

時計を見れば時刻は1時半。

幸田が仕事に行くために自宅を出るのは、いつもなら2時半なのだが、長く休んでいたために溜まっていた仕事や引継ぎがあり最近は少し早く出社していた。

それならば三城とはもう別れなくてはならない。

早く別れたいと思うはずもない。

一時でも長く共に過ごしたいのだ。

内心の葛藤から、俯いて無言になってしまっていた間に、車はマンションの前についてしまった。

「着いたぞ」

「、、、あ」

一拍遅れて出た声は、到底言葉とは呼べず、寂しさから漏れ出た息だ。

「えっと、寄って行きますか?」

先ほどまでグルグルと考えていた事が無駄のように、サラッと口から出た言葉に幸田本人も驚く。

返答を求めるように見上げた三城の面持ちは、僅かながらに眉間にシワが寄っており、見ようによっては不機嫌そうだ。

「いや、このまま帰る」

暫しの沈黙を得て出された答えに、幸田は落胆する。

別れを惜しんではくれないのかと一抹の寂しさを覚えたが、今更「帰らないで」と言える訳もない。

それにあまり時間も無いのに引き止めてはいけないという思いもあり、自分を納得させて笑顔を向けようとしたが、それよりも三城が再び口を開く方が早かった。

「部屋なんかに上がったら、自分を抑えれる自信がないからな。」

「なっ、、、」

「じゃぁ、また来週、同じ時間同じ場所で。」

当然のように次の約束を取り付けた三城は、幸田の後頭部に手を回して支え、別れのキスを施す。

公共の路上、誰に見られるかも解らないという事も忘れ、二人は重ねた唇を貪りあった。



 
*目次*