三城×幸田・初めての・・・編23



一週間という時間は、飛ぶように過ぎていった、と言いたい。

仕事中は忙しさから時間の経過を早く感じれたから何も問題は無かったのだが、間に有ったたった一日の休みはだけは苦痛だった。

普段なら溜まった家事をするなり寝て過ごすなり、休みを疎ましく思う事などなかったのに、その日はやたらと時間が進まない。

何をしても手につかず、気かつけば携帯か時計を見ている。

いっその事三城を会社の前で待ち伏せて、、、などとも考えたが、止めた。

仕事が終わる時間も解らないし、疲れている所にいきなり現れても迷惑だろうと思ったからだ。

それなら連絡を入れてから、、、とも考えたが、翌日もしっかり朝から仕事のある相手を思えば、その行動はいささか自分本位に思えた。

そんなこんながありながらも一応は「飛ぶように過ぎた」と思えた一週間だ。

先週の別れ際に約束した通り、同じ時間に同じ場所、つまりシティーホテルのラウンジで待ち合わせをしている。

あまり数を持っていないスーツを、先週とは違う物を選んで着てきた。

ボーナスが入ったなら是非一着は買いたい。

その時はいつもの量販店ではなく、少しだけお洒落な店を覗いてみよう。

とても三城と同等とはいかないが。

ぬるくなりつつあるコーヒーを飲み、携帯で時間を確かめると約束の15分程度前だった。

今日もこの後の予定は決まっていない。

三城にプランがあるなら任せたいが、正直またあのような高級店に連れて行かれたらどうしようとも思う。

元々相手に合わせる事を厭わない幸田は、自分の意見を押し出す事をあまりしない。

三城と会ってからのもろもろは幸田にとっての異例の事だった。

二人が付き合い初めて一ヶ月過ぎ、そろそろ高ぶり続けた気持ちが安定してくると、その「異例」も使えなくなってきた。

こうしたい、ああしたい、と言えない事もないのだが、先に相手に言われると「嫌」とは言えない。

日本人の多くがそうなのかもしれないが。

三城はどうなのだろうと考え、すぐに否定的に首を振った。

あの人が「NOと言えない」タイプな筈が無い。

そうであれば、あの若さで今のような地位に立てている筈がない。

会話の断片で判断するに、部下には年上の人も多数居ると思われる。

未だに年功序列が残る日本だが、外資系の三城の会社は完全な実力主義らしい。

そんな男が何故自分を選んだのかなんてまだ解らない。

自分で思う自分は、人より飛びぬけている所なんて何一つないからだ。

本人に聞いたところで、甘い言葉で嘘か真かも解らないままに流されてしまう事間違いないだろう。

「はぁ、、、」

何に対するため息かも知れぬ物を漏らし、カップに残っていたコーヒーを飲み干す。

その胸に宿るのは、先週よりも色濃い不安だった。



  
*目次*