三城×幸田・初めての・・・編29



今別れたら、また一週間会えなくなってしまう。

そんな思いが幸田の脳裏を過ぎる。

目覚めた後シャワーと昼食を経て、三城の運転する車で自宅まで送ってもらっていた。

ちなみに、今日の昼食はファミレスだ。

こういった所も、三城は随分と久しぶりだと言って幸田を驚かせた。

時刻は先週よりも幾分遅い午後2時前。

けれど別れ難さ故に、路肩に止めた車からなかなか降りる事が出来ず、どうでもいい話で別れを引き伸ばしていた。

「そう言えば、」

何度目かの「そういえば」を幸田が言った時、チラリと時計を見る三城が視界を掠めた。

幸田のタイムスケジュールを大体知っている三城は、あからさまに言いはしないものの気にはなっているのだろう。

「恭一」

話し出しかけた幸田を遮って不意に呼ばれた名前に、背中がすくみ上がる思いがした。

何を言われるのだろう。

帰れ、だろうか。

不安に包まれた幸田は、それも顔に出たらしい。

その想いから守るように、身体を捻り向かい合う三城はフッと優しげな笑みを浮かべ、大きな手の平で幸田の頬をそっと包みこんだ。

三城の手は全体的に大きく指もとても長いが均整が取れており、無駄な肉は付いておらず引き締まっている。

幸田はその手が大好きだった。

触れられるだけで気持ちよく、不安など吹き飛んでしまう。

だが続けられた言葉に、別の意味で心臓を揺さぶられた。

「職場まで送って行っても構わないか?」

どこまでも優しい声だ。

脳に響くようなバリトンで囁かれるだけでどうにかなってしまいそうなのに、その上「男の俺が」と頭に付きそうなその言葉に胸が熱くなる。

「もちろんです。でも、三城さんはいいんですか?」

即答の勢いで答えた幸田は呂律も怪しく、三城は噴出し笑った。

そんなに笑わなくても、と羞恥がこみ上げる。

バカにされている訳ではないだろうが、こんな事ひとつスマートに出来ないのかと思われているかも知れない。

それもこれも相手が三城だからこそなのに、と唇が尖りそうになる。

「無理だったら言わないだろ?俺もお前と少しでも一緒に居たいからな。」

同じ思いだったという事がより一層嬉しい。

心から溢れた笑みを浮かべると、頬に触れる三城の手に自分の手を沿えて下ろした。

自分よりも一回り大きいその手を少しだけ力を入れて握った。

「準備しなきゃいけませんから、三城さんも家に上がってください。、、、、大した所じゃないのがお恥ずかしいですが」

「お前の部屋なら何でも。」

綺麗に口角をあげて笑って見せた三城に、幸田は見惚れてしまった。

惚れた欲目なのかも知れないが、こんな笑みを万人に振りまかれては困る。

幸田の苦悩を知ってか知らずか、三城はキーを外して悠々と車から降りた。



 
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