三城×幸田・初めての・・・編30



マンションと言う名のアパートの二階に幸田の部屋はあった。

202号室との部屋番からも解るように、角部屋ではなく両隣にも部屋がある。

学生時代に住んでいたプレハブのアパートに比べれば防音はされているが、それでも怒鳴り声などの大声は筒抜けだ。

もちろん言葉までは聞き取れないが。

東京という土地柄、近所付き合いは皆無で、仕事の時間が一般の会社員と異なる幸田は顔見知りすら居なかった。

良くも悪くも目立った事をしていないのも理由だろう。

自分が近隣の住民にどう思われているかなんて考えた事も無い。

そんなここでの生活もかれこれ3年近くになるだろうか。

こんな覚え方は三城に悪い気もするのだが、引っ越してきて間もなく浩二との関係が始まった記憶がある。

それなのに。

二週連続で、土曜の昼下がりにBMWで乗りつけ、しかもこんなに美麗な男と居るのだ。

車内でのキスやイチャツキを見られていたかまでは解らないが、退屈な主婦の噂の的になりそうだ。

せめてさっさと部屋に入ろうと、ポケットから取り出した鍵で自宅の扉を開けた。

「どうぞ、、、狭いですが」

はにかみながら言い、先に入った幸田は三城の分だけスリッパを出した。

半日以上無人だった室内は微かに篭った臭いがする。

元々物が少なく、根っから真面目な幸田の部屋は日ごろからキチンと片付いていた。

けして几帳面では無いのだが散らかしても、その日寝る前に、もしくは出かける前に片づけをする癖がついているのだ。

掃除は休みの日にする程度だが、整理整頓はしておかないと、何となく「ダメ」な気がしてしまう。

2Kの部屋は、入ってすぐに台所、次が茶の間で一番奥が寝室と縦に並んでいる。

数年前に改築し、その後に入居したため、床はフローリングだし扉は全てスライド式で一見はお洒落だ。

だが台所は決して「キッチン」と呼べた雰囲気ではないし、風呂場も然りで「バスルーム」とは程遠い。

幸田も三城同様料理は殆どしないのだが、それでもまだ台所に生活感は見て取れる。

弁当を温めるレンジや、カップラーメンを食べるためにヤカンでお湯を沸かしたりしているからだろうか。

「ここが恭一の家か」

幸田が取るものも取らず、とりあえずお茶でも、とお湯を沸かしていると、三城の感慨に耽る声が聞こえて来た。

「適当に座っててもらえますか?僕は着替えて来ます」

お湯が沸くまで暫く時間もかかるだろう。

茶の間にしている部屋に三城を通すとソファーに進めた。

ただしソファーと言っても、三城の家にあるような足つきでセット型のような立派な物ではなく、座布団が進化したようなロータイプの物だ。

「あぁ解った。」

言われた通り三城はそこに座り、長い足を所帯無げに投げ出している。

我家ながらここに三城は不釣合いだ、と内心思いながらも幸田は奥の寝室へと姿を消した。



 
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