三城×幸田・初めての・・・編31



その可能性を、すっかり頭から失念してしまっていた。

幸田が寝室へ入り、着ていたスーツを脱ぎ捨てる。

下着は今日も三城が用意してくれていたからいいとして、カッターシャツは着替えないと。

袖から腕を抜き上半身を裸にした時、木製のスライド式扉がガラリと音を立てて開いた。

「良いタイミングだったな」

軽く笑みを含んだ三城が寝室へと入って来た。

「あっ、、、うわっ」

まさか入って来るなんて思わなかった。

いや、考えもしなかった。

咄嗟に、手にしたままのシャツで胸元を隠す。

見られて不都合がある訳じゃないし、女の子じゃあるまいし、とも思ったのだが煌々と蛍光灯が灯る下で凝視される事に耐えられない。

「隠すなよ、今更」

クスクスと楽しげな三城は幸田の前まで歩み寄って来た。

「今更」とはどう言う意味だろう、、、それを理解すると同じくして、昨日の行為がフラッシュバックのように蘇る。

重ね立った身体。

極近距離で見つめられた身体。

けれど違うのだ。

こんな言い方をしては変な誤解を生みそうだが、ベッドの上だといいのだ、いくら見られても。

長い指が、幸田の首筋に伸ばされる。

「んっ、、、」

指が微かに触れただけで、幸田はビクリと震えた。

何も期待している訳じゃない。

そうじゃないけど、思い出してしまうんだ。

昨晩の行為を。

言い訳がましい言葉がポツポツと脳裏を掠めていく。

重ね重ねの淫靡な妄想で潤んでしまった瞳で、10cmほど高い三城を見上げて見つめる。

シャツを握り締める手の力が緩んでいく。

けれど、三城の指はすぐに離れて行ってしまった。

「え、、、?」

無意識に名残惜しげな声が漏れる。

そんな自分がなんとも恥知らずで羞恥を覚えた。

盛りがついた中学生じゃあるまいし、裸を見られて少し触れられただけでなんだ。

「そんな目で見るな。俺まで抑えられなくなる。それに、今からじゃ時間がないだろ?」

幸田の心を見透かしたような、比喩した言葉を残し三城は部屋を出て行き、カタンとまた小さな音がして扉が閉められた。

そんな目、とはどんな目なのだろう。

「何だったんだ、、、?」

残された幸田は閉められた扉を呆然と見つめた。

この向こうに三城は居るのだろう。

カタカタ・・・・ジュッー

「あーーーっ」

ヤカンのお湯が吹き零れた音が扉を数枚挟んでもしっかりと聞こえ、軽くパニックになった幸田は半裸のまま右往左往してしまった。



 
*目次*