三城×幸田・初めての・・・編・4



三城が「ここだ」と言って立ち止まった店を見上げ、幸田は思わず息を呑んだ。

その店の外観や名前は幸田もよく知っていた。

TVや雑誌などで頻繁に取り上げられているからだ。

なんでも、フランスの3星レストランで修行を積んだイケメンシェフがどう、だとか、有名人の誰かが大絶賛しただとか。

「特別な日のデートで一番行きたい店」、なんて見出しで紹介している所もある。

だからこそ自分には無縁だといつも聞き流していた。

ロマンチックな雰囲気で「特別な空間」をコンセプトにしている為か、客の年齢層は様々だが、カップルばかりだろう事は間違いない。

眉を寄せた幸田が無言で三城を見上げる。

言いたい事が解ったのだろう。

軽く肩を竦めた三城は一歩幸田に詰め寄った。

「個室を予約している」

「個室、、、ですか?」

「あぁ、周囲の眼を引くのは煩わしいだろ?」

「そうですよね、こんなお店に男同士で来ると可笑しいですよね」

幸田の胸が、少しだけ悲しく鳴った。

「違うだろ?お前が綺麗だから見られてしまうんだ」

恥ずかしげもなく、どころか少し拗ねたような三城の言葉に、「何を言っているんですか」と笑い飛ばしたいのはやまやまだったが、あまりに驚きすぎて口をパクパクと開閉させるしか出来なかった。

この人は何を言っているのだろう。

まるで日本語を話しているのでは無いように、言葉がスッと頭に入ってこない。

「ここに来るまでも何人が振り返ってお前を見ていたと思っているんだ?」

それには気づいていたが、その「見られている」の対象は三城だと思っていた。

いや、今だって三城だとしか思えない。

だがそれをここで言いあっても、だたのバカップルでしかないだろう。

何も言えなくなっている幸田に、三城は深いため息をついて独り言のように呟いた。

「お前がバイじゃなくて本当によかったよ」

「え?」

「行くぞ」

「え、待ってください」

言葉の意味を問いただす暇を与えて貰えず、さっさと店内に入っていった三城を幸田は慌てて追いかけた。



 
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