三城×幸田・初めての・・・編・7



タクシーの窓からテールランプの流れが見える。

二人で一本開けたワイン程度では緊張が勝ってか酔う事が出来ず、しっかりとした意識の中、三城と幸田はタクシーに乗った。

幸田を先に促し、後から乗り込んだ三城が告げた目的地は、自宅と思われる都心一等地のマンションで、幸田は目を剥いた。

そんな所に住んでいる人なんてTVの中でしか見た事が無い。

それも有名人とか社長クラスだ。

三城もそういったレベルなのだろうか。

おもわずマジマジと横顔を見てしまっていた幸田の視線に気づいたのか、三城は苦笑を浮かべる。

「会社からの近さを優先して選んで、他で無理をしているだけだ。」

とても三城が「他で」無理をしているようには見えなかったが、嫌味には取れず好感が持てた。

立地条件だけはとても良い、と言う三城の言葉通りタクシーに乗り込んでものの数分で目的地についた。

千円札二枚を置いて三城は黙ってタクシーを降りてしまったので、幸田はオロオロと運転手と三城を見比べてしまう。

けれど三城は「いいから」と言いそのまま幸田を下車させた。

「釣りなんてはした金いらない」という事なのだろう。

タクシーから降りて目の前に聳え立つマンションは俗に言う「オクション」といった雰囲気だった。

とても「立地だけはとてもいい」とは思えない。

何階立てか解らない高層で、外壁からしたって幸田の近所にあるマンションとは違った風合いだ。

エントランスはホテルのようなフロントがあり、コンシェルジュが三城の帰りに頭を下げる。

「待っててくれ」と言い残した三城はフロントに向かい、何言かやり取りをすると大きな袋を手に戻って来た。

「これか?クリーニングを頼んでてな」

「へぇ、、、そんな事もしてくれるんですね」

まさにドラマの中の世界だ。

エントランスも然る事ながら、エレベーターホールも廊下も扉一つ一つがホテルのようで、この向こう側に生活感溢れた空間が広がっているなんてとても想像ができない。

エレベーターに乗り、押されたボタンが最上階で無かった事に幸田は密かに胸を撫で下ろした。



 
*目次*