三城×幸田・初めての・・・編9



差し出された缶ビールを微かに震える手で受け取り、空いているソファーに腰を下ろした。

幸田が座るまでを視線で追っていた三城が眉間を寄せたのを、幸田は気づいていない。

「ありがとうございます。あ、開いてる」

一息ついて缶を開けようとした時にやっと開閉済みのプルタグに気がつき、とても嬉しく感じる。

些細な事なのに不思議だ。

自宅に呼ばれて出されたのがコーヒーでも紅茶でもなく缶ビールだったのが、妙に三城っぽく感じる。

三城が自分のためにコーヒーや紅茶を用意する姿が想像出来ないからだろうか。

「恭一」

まただ。

先ほど不意打ちで名前を呼ばれたばかりなのに、ただ三城に名前を呼ばれるだけなのに、鼓動が強く鳴り胸が痛い。

「なんですか?」

まだ口をつけていない缶から視線を三城に移す。

「お前、いい加減なれろ。アイツにも呼ばせていたんだろ?」

ソファーに深く座り缶ビールを煽る三城はいつに無く鋭い声で不機嫌そうだった。

アイツとは幸田が前に関係を持っていた浩二の事だろう。

「呼ばれていましたけど、彼と三城さんじゃ色々違うんですよ。」

それは決して三城にとって悪いように言ったわけではなかったが、三城はそう捉えなかったらしく、一際不機嫌そうに顔を顰めると空になったビール缶をローテーブルの上に置き立ち上がった。

「何が違うんだ?アイツは良くて俺はダメな理由があるならちゃんと聞かせろ。」

三城は幸田の前に立つと、片膝をソファーの上につき、反対の手を背もたれに置き、幸田を覆うように迫ってきた。

反射的に逃げようとしてしまった幸田は身体を後ろに倒し、三城との距離を取る。

近距離で視線がぶつかり合うと、逃げようとしてしまった事を後悔するが、開けたばかりのビールを零してしまわないかと気にもなり元に戻れない。

それに気づいたのか、三城は空いている手で缶を取り上げると、幸田を見つめたままローテーブルにそれを置いた。

幸田が身体を離した事がやはり気にいらなかったのか、三城の不機嫌さは更に増してたいが、怖いとは思わない。

その怒りが何処からくる物か正しく理解しているからだろうか。

だが、幸田が弁明をしようとするよりも早く、三城は完全に幸田を押し倒し、唇を重ねた。



  
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