フィルター・2



『───の、福祉施設の職員が、知的障害の女性に乱暴をした疑いがもたれ』

『何も解らない事を利用した凄惨な事件が───』

自宅に戻った智也は、缶ビールを片手にTVを見ていたが、ニュースが終わるとリモコンで電源を切った。

「、、、、はぁ、」

頻繁に報道される類似の事件。

自分が幸喜に抱く感情が「愛情」それもいわゆる「肉欲」を含むそれだと気づいた時から、こういったニュースに敏感になっていた。

明日はわが身。

そんな言葉が脳裏を過ぎる。

決して幸喜の心や身体を踏みにじりたいと思っている訳ではない。

故に無理やり抱こうと思った事など一度もなかった。

幸喜にはいつでも笑っていてもらいたい。

本当に好きだった。

今日のように幸喜に抱きつかれたりしたなら、鼓動は高鳴り、身体の中心へ熱が集まってしまうのではないかと思うほどに、愛していた。

出来る事なら、その身体を腕の中に閉じ込めてしまいたい。

自分のものだと示したいし、もしも幸喜も智也の事が同じように好きだと言ってくれたなら、なんと幸せな事だろうと思う。

何度この想いを口にしようと思ったか解らない。

だがその度に思い止まってきたのは、幸喜が智也の想いを「理解」しないで了承し、傷つけてしまう事だった。

「何も解らない、、、か。」

今のようなニュースを見るたびに思う。

被害者だと騒がれる女性(男性もだが)は本当に「何も解って」いなかったのだろうか。

知的障害にもいろいろあるが、あの子達は「健常者」と呼ばれる我々が思っている以上、理解をしているのではないのかと思うのだ。

ただそれを「健常者」に理解出来るように言葉に出来ないだけで、「LOVE」と「LIEK」の違いくらい知っているのでは無いかと思う。

智也は専門家でも医者でもない。

ニュースで報道されるほどだから、本当に被害者は「何も解って」なかったのだろう。

だが加害者側は「同意だと思った上で」、行為に持ち込もうとしたのではないかと思ってしまう。

「とんだ思い込みだな」

今までならば「犯罪者」に肩入れなどした事などなかったのに。

そうであるならば嬉しいと、そうであるならば、あるいは幸喜に想いを告げても良いのではないかと思い込みたいのだろう。

智也は自嘲めいた笑みを浮かべた。


   
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