人生の門出・編・8



どちらの体液ともつかない液体で、身体はもちろんシーツもべっとりと汚れている。

リードを許したのは最初の一度だけで、その後は三城の主導権のもと幸田は何度と無く絶頂を迎えさせられていた。

「はっ春海、さん・・・もっと・・・」

「どうした?こうっ・・・かっ?」

幸田の体内に深く埋め込まれた三城のペニスが、内壁を擦りながら突き上げる。

「ひっあぁぁっ・・」

とろとろとほぐれた幸田の後孔は三城の突き上げに嬉しげに震え、甘く何度も繰り返す伸縮で三城の欲望は高まり静まろうとはしない。

「イくぞ・・・」

正面から幸田を抱きしめ、数度目ラストスパートとばかりに腰の動きを早めた。

「あっあっあぁぁ」

早急な腰使いに、幸田も三城の背中に腕を回ししがみ付く。

身体の中も外も耐え難いほどに敏感で、止められない刺激がただ相手だけを求める。

「うっ」

「あぁ・・っ」

三城の熱が幸田の後孔を満たし、幸田もまた腹の上に性を放つと、二人の荒い呼吸がバラバラに聞こえた。

三城は幸田の中から自身を引き抜くと隣に仰向けに倒れたが、とてつもない疲れはそれ以上になんともいえない満足感を得ている。

ただ射精の快楽を得るだけではない、言葉に出来ない感情。

三城は横たわったまま幸田に首を回すと、おもむろにその左手を持ち上げ唇にあてがった。

「これからは二度と指輪を外すな。」

「え?」

「今までは目を瞑ってやっていたが、これからは新しい職場になるんだから、指輪は外すな。わかったな。」

どこにどんな虫がいるやも知れない。

自分がどれほど優れた容姿をしているかという事を、幸田本人は全く自覚していないのだがら、最低限の予防策を張らないと気が気でないのだ。

「でも、結婚とか聞かれたら・・・」

「前にも言ったが、今時恋人が居るだけで皆指輪を嵌めている。」

「紹介してって言われたら・・・」

「遠距離だとでも言え。」

でも、でも・・と口ごもりながら、けれど一つ頷くと決心を固めたのか、握っていた三城の手に指を絡め握り返した。

「・・・・・・・解りました。その代わり、春海さんも外さないでくださいね?」

「俺はあの日から外した事は無い。」

「・・・・信じます。」

事実だというのに、日ごろの行いが招いた結果か、幸田は簡単には信じてくれないようだ。

疑わしそうな表情で言った幸田は身体を横向け、肘で身体を支えると数センチ上から三城を見下ろした。

暫し見詰め合い、おもむろにはにかんだ笑みを浮かべる。

「こーいうのが、幸せなんですね。」

「こんなものでいいのか?もっと大きな幸福をくれてやるぞ?」

「そんな欲張りしていいのかな・・・」

「あぁ、構わないさ。俺が与えてやるといっているんだ、素直に受け取れ。」

「そうですね。春海さんになら、もっとずっと大きな幸せを貰えそうです。」

クスクスと笑った幸田は本当に幸せそうで、三城の方こそこんなにも幸福で良いのだろうかと怖くなる。

朝目覚めたら隣に幸田はいないのかも知れない、と言えもしない恐怖にかられる事など頻繁にあった。

けれど、もう信じるしかないのだろう。

そしてもしも幸田が目の前から居なくなったとすれば、繋ぎとめる事の出来なかった不甲斐ない自分を呪うしかない。

「大切にするから、な。」

「はいっ」

何処へも行かせはしない。

行きたいと思わせはしない。

今腕の中にある存在は大きくけれど儚く、自分の為にも全力で守ろうと改めて心に決めたのだった。



 
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