君と僕と・10


数日が過ぎた。

一番最初に会った時ニルが「辛い思いもさせないし、出来るだけ大切にする」と言ったとおり、僕は何一つ嫌な思いをしなかった。

部屋は暖かいし、食事も温かい。

毎日お風呂に入れてもらえて良い匂いがするし、狭い部屋にずっと居る必要もない。

何より、怖い男の人に怒鳴られたり痛い事をされたりしなかった。

僕に触れるのはニルとたまに主人様だけで、そのどちらの手つきも優しい。

全てに満たされている気がする。

ただ一つの不満が生まれたとするならば、そのどちらの手も僕を抱きしめてはくれない事。

今まで沢山の男の人にいっぱい辛い事をされてきてそれは嫌だったけど、抱きしめてもらうのは好きだった。

ここに来てからはそれが無くて少し寂しい。

だから僕は自分からニルに抱きついた。

ニルの身体に回した僕の腕は、ニルの腰より少し上を抱き、頭は肩に当たった。

ギュッっと抱きついてみせると、ニルは驚いたように息を呑むのが聞こえる。

当然抱き返してもらえると思っていた。

でも、ニルはやんわりと僕の肩を押して身体を離した。

ニルは僕には何も言わない。

「何でもないです、まだ子供ですから」

僕の後ろに居た主人様に向かって、緊張感のある声で言った。

主人様の前だからダメだったのだろうか。

「口ごたえか?」

主人様の声はいつも冷たいけど、今はいつも以上に冷たくて怖い。

動けなくしている僕の横をニルは通り過ぎて行った。

「申し訳ございません」

「、、、、来い」

「はい」

二人は僕に声をかける事無く、寝室とは違う方に消えて行く。

そこは僕の部屋と言われた場所でもないみたいだ。

バタンと大きな音を立てて閉まったらしい扉に、僕は拒絶感を知らせれた。


   
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