君と僕と・16


アスとの暮らしは、想像よりも嫌なものじゃなかった。

時々ニルを思い出して寂しくなるけど、でも全く会えない訳でもない。

ニルとアスは同じように温かくて優しくて、全然違った。

アスはずっと一緒に居てくれる。

離れている時間なんて一日の中で数分しかないってくらい、ずっと一緒でずっと手を握っていてくれた。

主人様のお世話もしていたニルと違って、僕しかいないからだろう。

それがすっごく嬉しい。

アスは僕を部屋の外に沢山連れて行ってくれる。

階段は危ない、とゆっくり降りて、寒いからと首に何かを巻いてくれて外に出た。

確かに外は寒かったし、風は冷たかったけど、お店の寒さとは全然違う。

「ねぇウミ、ウミっていい名前ですね」

ある日アスは外を散歩している時に言った。

その名前はニルが付けてくれたと、伝えたかったけどすぐに諦めた。

「ウミはウミを知っていますか?」

意味が解らなくて、首を傾げて見せる。

「海はね、とっても綺麗なんですよ。キラキラ光ってね。いつか見に行きましょうね」

僕は何も見る事は出来ないけど、それをちゃんと解っているはずのアスがそう言ってくれた事がなぜかすごく嬉しくて、僕は何度も何度も頷いた。

   
君と僕と・TOP