君と僕と・17


その時、珍しくアスと僕は離れていた。

散歩から僕の部屋に戻ろうとしていたけど、廊下の途中でアスは「ちょっと待ってて」と言って行ってしまった。

僕は頷いてソコから動かずに居る。

けど、「ちょっと」してもアスが戻って来ないから、僕は少しだけ歩いた。

一人で歩くのは怖くて、壁に手をついて歩く。

すると知らない女の人の声が二つ聞こえて来た。

「ねぇ、アスさんってすっごくカッコいいけど、何者?」

「知らないの?あの人、キリィ様の執事してたのよ」

若い弾んだ声で、アスへの好意が聞き取れた。

好きなアスを好意的に思ってくれているのは嬉しい事のはずなのに、心がもやもやする。

「え、そうだったの?キリィ様って言ったらあの方よね?」

「そうそう、先月亡くなられたフィン様の甥の。」

「フィン様が可愛がられてた方よね。確かまだ17・8歳だった」

「長い闘病中ずっと看病なされてたそうよ」

「へぇ、、、そんな方がなんでまた」

「そりゃぁ、最愛の主人が亡くなって気落ちされてたから代わりにアノ子の世話をさせてるんじゃない?」

「あぁ、、なるほどね」

僕はその子の代わりにあてがわれたのだと知ると、妙にすっと心が落ち着く。

彼女達同様「なるほど」、と思った。

けど、それ以上にすっごく寂しい。

その子の代わりは別に僕じゃなくても良かったんだ。

ニルは僕が良いと言ってくれたけど、アスは僕じゃなくても良い。

ただ、世話をしないと生きていけない子だったら誰でもよかったんだ。

結局、僕に望まれるのは大人しく世話をさせる事だけなのだろう。

でも、仕方が無い。

僕はアスとの約束を守れないから、だからアスも僕に本気で返す必要なんてないんだ。

そう思うと涙が出そうになったけど、勘違いだろう。

僕にそんな「機能」は無い。

   
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