君と僕と・19


あの日から、僕は部屋の隅から動かなかった。

ニルの望みが僕の世話なら、大人しく叶えようと思ったけど、それがアスなら反抗しようと思ってしまう。

それでもアスはずっと僕の側に居てくれて、頭を撫でたり、手を握ったりしてくれる。

僕がそれに反応する事は無かったけど、止めれたら止められたで、残念に思う。

ある時、アスは女の人に呼ばれた。

「待っててください、すぐ戻ります」

僕を撫でていた手を離し、アスは部屋から出て行く。

とても気になった僕は、暫くぶりに立ち上がりそっと後を追い聞き耳を立てた。

この間の噂話をしていた女の人の声に似ていたからかもしれない。

「あの、クリスマスの予定はありますか?」

僕はクリスマスがなんなのかよく解らなかった。

「あると言えばありますし、無いと言えば無いのが予定と言いますか」

アスの声はニコヤカだった。

何だか腹が立った。

「だったら、私とデートしてくれませんか?」

「いえ、ですから一応予定はあるので」

「無いと言えばないのでしょ?」

女は引き下がらない。

「でも、無理です。さよなら」

アスの声は有無を言わさない。

ニコヤカな声は、でも優しげではなかった気がする。

僕は呆然と立ち尽くし回りの遅い頭でその意味を考えたけど、そもそもクリスマスが何か解らないから理解する事なんて到底出来なかった。
   
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