君と僕と・20


クリスマスが来た。

やっぱりクリスマスがなんなのか解らなかったけど、主人様が「クリスマスだから今日は皆早く帰れ」と言ったから知った。

ニルと主人様は何処かに行ったようだ。

屋敷に居る沢山の人たちも、俄かにざわめきたっている。

お祭りか何かなのだろうか。

どんどんと屋敷から人の気配がなくなっていく。

こんな事初めてだった。

当然と言うべきか、僕はいつもと何も変わらなくて、そんな人の気配をボンヤリと感じるだけだった。

変わるとするなら、いつもは一緒のアスが今日は一緒じゃなくなるだろう事だけだ。

そうだと直接言われた訳じゃないけど、予定があると言っていたからそこに行くと思う。

そして、その「予定」は、亡くなったキリィさんのお墓とかじゃないかな、と思う。

ここに引き取られてから僕は、一般常識を沢山覚えて、墓前が大切な場所だという認識も持っていた。

意味は解らないけど。

それなのに、アスは僕の手を握ったまま居なくなろうとはしない。

僕に気を使っているのだろうか。

僕はアスと過ごせないのはとても嫌だったけど、でもアスは好きだから、いつも守ってくれるからお返しがしたくて、自分から繋いでいる手を離した。

そしてアスを軽く突いて「離れて、行って」と必死に示してみせる。

これでアスは自由だ。

それなのに、アスはすぐに僕の手を掴む。

「どうしたんですか?こんな日に限って離れたがるなんて」

真剣に不思議そうな声だった。

悲しげにさえ聞こえる。

それはアスのためだよ、と伝えたかったけど、これ以上気持ちを伝える術を思いつかない。

オロオロと何も出来ずにいると、アスは繋いでいる手を引いて僕を抱き寄せた。

「私と過ごすクリスマスは不満ですか?」

僕は必死で首を左右に振った。

クリスマスの意味は解らないけど、アスと過ごしたくない日なんて一日も無いのだから。


   
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