君と僕と・4


僕を「カウ」と決めた二人は僕に色々な物を渡してくれたけれど、そのどれもどうしていい物かか解らなかったから、渡された物を渡されたままに持ってじっとしていた。

すると僕の手からそれらが無くなり、その代わり身体とか足とか手とかが温かくなった。

ニルがそれをつけてくれたらしい。

特別な時以外は薄手の服しか着せて貰えなかった僕はとても嬉しかった。

嬉しくて、手で身体中を触って確認していると、手を握られて軽く引っ張られる。

「行こう」

鈴の音の人だ。

この人が僕の主人なのだろうか。

僕を「カッタ」二人は僕よりも大きく、二人の声が頭の上から降ってきた。

綺麗な声の人は、鈴の音の人よりも更に大きいみたいで声が遠い。

鈴の音の人は綺麗な声の人を「主人様」と呼び、綺麗な声の人は鈴の音の人を「ニル」と呼んだ。

それが二人の名前なのだろう。

僕の主人がニルなら、主人様は主人の主人だから逆らっちゃいけない。

あの店で僕は色々な風に呼ばれていた。

302とか様々な女の子の名前とか、お前とか。

だから「自分の名前」と愛着のいくものは一つもない。

それが普通だと思っていた。

ニルに手を引かれながら、滅多に履く事のなかった靴を履いて歩いていく。

少しくすぐったい。

「主人様、この子の名前って何でしたっけ?」

ニルの困ったような声がする。

「前はアイラと呼ばれていたが名前では無いらしい。名前は決まっていないと聞いている。お前が決めろ」

二人のやり取りは僕には不思議な事ばかりで、理解するのに時間がかかった。

その間にも会話は進んでいき、追いつけなくなる。

その時も、最初のニルの言葉の意味から考えていたから僕に声がかけられた時には心底驚いた。

「ねぇ、君。君の名前を『ウミ』にしてもいいかな?」

驚きのあまりビクつき僕は咄嗟に首を縦に振っていた。

「ウミ」に意味があるのか無いのかも解らなかったし、その名前がいつまで続くかも解らない。

でも今まで僕に拒否権なんてなかったから、聞かれたら頷くものだと思っている。

僕が頷くとニルは嬉しそうに主人様に言った。

「良かった、気にいってもらえたでしょうか?」

「さぁな」

主人様の声はそっけなかったが、ニルとは違うしっかりとした手が僕の頭をクシャリと撫でた。





   
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