クライン×北原・01


直属の上司、三城春海【みき・はるみ】が居なければ仕事がない。

海外営業部・第一課に所属しているとはいえ、北原直哉【きたはら・なおや】の業務内容と言えばもっぱら彼のサポート、秘書のような役割だからである。

通常ならば三城の出張には殆どと言って良いほど同行するのだが、今回ばかりはお役が回って来なかった。

その理由は、彼のパートナーであるやまとなでしことも例えられる美麗な男、幸田恭一【こうだ・きょういち】が同行するからに他ならない。

正直、心底悔しかった。

プライベートで三城が彼を溺愛していると、そこに自分が入り込む隙など微塵もありはしないのだと理解はしていたけれど、ビジネスのサポートまで持っていかれるなんて。

出張に同行するからと言って、幸田がまるっきり自分のポジションに成り代わるなど考えてはいない。

数度会話を交わしただけだが幸田が三城のビジネスに興味を持っていないという事は知れていた。

だからこの感情はどこから来るものなのか。

「・・・・」

北原は主不在のワークデスクを拭き上げた。

彼がここへ戻るのは一週間後である。




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