クライン×北原・14


*注意*『』内のセリフは英語です。

上半身だけをベッド上に横たえさせられた北原は、天井を見上げるのか精一杯だ。

白い天井には何か模様があるようにも思えるが、薄暗がりの中それを確認する術はない。

男女のSEXについてはもちろん、男同士のそれにしても、情報としての知識は持っているつもりだった。

だが、男同士ならば所謂「挿入」が重視されると、上半身になど触れないと考えていたのは大きな間違いのようである。

目線を下げた先、胸に顔を埋めるクラインを、北原は身動き一つ出来ずに受け止めるしか出来なかった。

女性の豊かな乳房ならばともかく、膨らみも当然ながら柔らかさも無い男の胸を舐めようと思うなんて。

そんな事をして何が楽しいのか、と問いたい気持ちがあるもののそれを口にする前に北原は唇を硬く結んだ。

「くっ・・・ん」

彼の熱い粘膜が肌に触れ、乳輪を辿り、その先端を舐め上げる。

それは感じた事も無い不思議な感覚で、くすぐったかったけれどそれだけではなかった。

触れられているのだと突きつけられるような鋭い感触であり、これを快感であるとか気持ちが良いのかは解らないまでも、嫌だとも思えない。

片方を彼の舌が、もう片方を彼の指が、丁寧にそこを刺激した。

『ナオヤ、痛くはないか?』

『それは・・・大丈夫です』

『そうか。では、もう少し強く行っても良いだろうか?』

『・・・え?』

今でも北原にとっては刺激だったというのに。

もっと強いものとは何なのだ、と思えど、疑問系でありながらも彼のそれは質問ではなかったようだ。

北原が答える前にクラインは再び胸へ顔を埋め、先ほどまでは舌先で転がされていただけの乳首は、緩やかに噛まれた。

「ぅっ・・ン」

僅かな痛みと、甘い痺れが、頭の天辺から足先まで電流のように走り抜ける。

北原は咄嗟に頭上へとずり上がりクラインから逃げたが、彼の唇が離れても尚、そこに何とも言えない感覚が残っていた。

「あっ・・はぁ・・・」

上へと這い上がっただけクラインもそれを追い、心配げに眉を潜めた彼は北原の肩の左右に手を突いて覆いかぶさり見下ろす。

僅かだった明かりはクラインの姿でより一層隠れてしまったが、逆光の中でも不思議と彼の瞳だけは青いのだとはっきりと見えているような気がした。

『すまない、ナオヤ。痛みを与えてしまったのだろうか?』

『いえ、そうではありません・・・ちょっと、驚いただけで。申し訳・・・、ございません』

『ナオヤ。今はプライベートだ。硬い言葉はいらない。・・・驚いただけ、か。ここもそうだろうか?』

真っ直ぐに見つめながら真面目な面持ちで囁いたクラインは、言葉を切ると途端に優しげな───優し過ぎる程に表情を緩めた。

けれど細められた瞼の奥の瞳は、優しさだけでは無い光が見て取れる。

その妖しさに気を引かれた瞬間、クラインの片手が北原の下肢部へと向けられていた。

「あっ・・」

止める間もなく彼に握りこまれたそこでは、スラックスと下着の下で北原のペニスが息づく。

誰にも触れられた事などなかった北原のペニスは、布越しとはいえクラインの手の平を感じこれでもかと熱が集まっていた。

自分では無い者の手が、秘められた場所を掴んでいるのだ。

嫌悪は無いものの、羞恥心が身体を駆け巡る。

『ナオヤ、ここはもうこんなにも硬くなっている』

「っ・・・」

『見せてくれ、君を・・・』

クラインの手が、片手で器用に北原のベルトのバックルを外す。

金属が擦れ合う音を聞きながら、指先一つ動かす事が出来なかった。

今、自分のペニスがどのような状態であるかなど、見ずとも解るのだ。

SEXをし彼を受け入れる事に何の躊躇いも無いとは言え、北原にとってそれとこれとは別問題である。

「ん・・・」

思わず目を瞑ると、外気に触れた感覚からフロントが寛げられ、スラックスが下げられようとしてると知った。

恥ずかしさはとても強かったけれど、北原は懸命にそれを堪え腰を持ち上げ脱衣を手伝う。

太ももが、ふくらはぎが、空気に晒されたかと思うと足先からスラックスが落ちたパサリという小さな音を聞いた。

ピッタリとしたボクサーパンツだけを身に着けた状態で、彼の目下に寝転がっている。

グレーカラーの下着は欲望により前方が変形しており、クラインの痛い程の視線を感じた北原は目を瞑ったまま顔を背けた。

何故自分だけがこのような格好にさせられているのだ。

そんなに見ないでくれ。

それすらも北原の口から出てはくれない。

『あぁ、ナオヤ。愛しくて堪らない』

深い吐息と共に吐き出された呟きが、耳の奥で木霊する。

そうと言われても何も返せなずにいる中、彼の手が下着をも一気に膝の下まで下げた。

「っ・・・・」

何も守る物の無くなったペニスが、ヒクリと震える。

半ば立ち上がっているそれを今すぐ両手で覆い隠したい衝動にかられながらも、耳の奥に残るクラインの甘い言葉から懸命に耐えた。

『ナオヤはここまでとても可愛い。まるで少年のようだ』

「・・・」

どこか引っかからなくもないクラインの言葉ではあったが、その声音には嫌なものを感じなかったのでけなしているとは取らない事にする。

自尊心を刺激されたものの、けれど自分自身でも己のそれは自慢出来る程度ではないのだろうとなんとなく知っていた。

陰毛の薄い、そして色も薄いペニスを、クラインの手が包み込む。

「んっ・・・」

初めて知る、人の手の暖かさ。

それがこんなにも興奮するモノなんだというのも、今初めて理解した。

彼の手がしっかりとペニスを握り直し、ゆるゆると上下にしごくだけで、北原のそれは呆れるほど早く形を整えていく。

「っ・・ク・・・ん・・」

『日本人のペニスは小さくて硬いと聞いていたが、本当だったのだね。もうこんなにも硬くなっている』

嬉しげに声を弾ませ、彼の指先は亀頭を弄んだ。

つるりとした部分から割れ目までを何度もなぞられれば、乾いていたそこはすぐに汗ばみ始めた。

「んっ・・・・ッ・・・あまり・・・見ない、で・・」

喘ぐ喉を押し殺し、北原は懸命に言葉を繋いだ。

気を抜けば唇から溢れるのは意味を成さないはしたのない嬌声ばかりになりそうで、言い終わるやいなやきつく唇をかみ締める。

24年もの未経験が生んだ幻想の結果だろうか。

厭らしい事は悪い事のように思えてしまっていた。

『何故?ナオヤはとても奥深しい。けれど、私の前では何も隠さずに全てのナオヤを見せてほしい』

ペニスを手中に収めたまま、クラインは僅かにはみ出たままであった北原の足を完全にベッドへと上げた。

安定の取れた身体に安堵感を覚えるよりも早く、クラインは北原のペニスを激しくも巧みに扱く。

「ぅっ・・くっ・・・」

彼の手つきが馴れているな、などと脳裏を過ぎったのは一瞬。

すぐにそんな事を考えられなくなっていった。

耐えられない。

かみ締めた唇では息が苦しくて、脳に酸素が行っていないとありありと解る。

イヤイヤと首を振る北原を捉え、クラインは結ばれた唇にそっと唇を重ねた。

『ナオヤ、唇を噛んではいけない。せっかくの可愛いここが傷だらけになってしまう。それとも、気持ち良くはなく、嫌なのだろうか?』

「ちが・・・そうじゃ、なくて・・・っぅ・・ン」

そうではない。

そうではなくて、むしろその逆なのだと、気持ちが良過ぎるから困るのだと、目頭が熱くなる。

クラインの優しい口付けにより唇を解くと、それ以上に硬く閉ざされていた瞼をようやく少し開いた。

薄暗いながらに光を感じると、ピントが合わない視線で懸命に彼の瞳を捜す。

『良かった。嫌ではないのなら、もっとナオヤの声を聞かせてはもらえないだろうか?私は、ナオヤの可愛い声を聞きたい』

『そんな・・・あっ・・そんな、恥ずかしい、です。・・僕の声など・・・・、かわいく・・ないっ・・ン・・』

『まさか。愛する人が自分の手で、誰にも見せた事のない姿になってくれるのだ。その声が可愛くないはずがないだろう?』

「あぁっそんな・・・」

『可愛い。ナオヤ、本当に可愛い』

クラインは、唇と言わず額と言わず、北原の顔中にキスを降らせた。

嬉しげな声で「可愛い」「愛している」そして「本当に硬い」と繰り返す彼の手淫は、今までが何だったのだと言いたくなるほど、段違いに───気持ち良かった。

こんな風にされれば良いも悪いもなく声が溢れるしかない。

それでも、恥ずかしい・はしたがないなどと頭が回る程に「やまとなでしこ」ではなく、あられもない声をあげながら、北原は止められない絶頂へと駆け上がっていった。

「あっあぁっあ・・・レイズ、レイズ・・・もう、もうだめ。出てしまう・・・」

『あぁ、ナオヤ。私の手の中に君の熱を放てば良い』

耳たぶに唇を当てられながらの囁きが後押しとなり、酸素を求めるように大きく口を開けた北原は背を仰け反らせ、クラインの手の中に吐性を果たしたのだった。




 
*目次*