三城×幸田・クリスマス・編・2



「幸田様でいらっしゃいますか?」

それは、7時ジャストだった。

「へ?」

もうすぐ三城は来るだろうと、そわそわしながら遠くに見える正面玄関を眺めていた幸田は、反対側からホテルマンに名前を呼ばれた。

突然だった為、幸田は間抜けな声を出してしまいながら顔を向けるとその主を見上げた。

幸田の座るテーブルセットの傍らに姿勢良く佇む、40代の品の良い男性は胸のネームプレートさえなければホテルのスタッフだとは気づかないだろう。

「はい、、、幸田は僕ですが、何か?」

おずおずと聞き返す幸田に、彼は思いもかけない事を言う。

「三城さまからの伝言をお預かりしております。1526室までお出でください、との事です。」

「はぁ?」

その言葉に幸田はまた素っ頓狂な声を上げた。

三城からは何も聞いていない。

慌ててテーブルの上に置いた携帯を開けてみるが、そんなメールは届いていないし、もちろん着信も残っていない。

それもそうか。

幸田に直接連絡をするくらいなら、わざわざホテルマンに伝言など頼まないだろう。

「こちらがお部屋のキーになります」

男性スタッフがカードキーを幸田の前に置き、恭しく一礼をするとその場を離れて行った。

「何なんだ?」

呆然と彼の姿を眺めていた幸田だったが、彼が見えなくなると無意識にテーブルの上で上品な金色に輝くカードに視線を注がれていた。




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ぼーっとしていても仕方が無い。

伝言を残したという事は三城はココには来ないのだろう。

「デート」の約束をしていた為、何処にも行かずにホテルでのんびり一泊、、、という事は無いと思うのだが、と幸田は首を捻りながらもエレベーターに乗り目的の階のボタンを押した。

誰も乗り合わせてこなかったエレベーターは直ぐに目的の階に達し、チンッと小さな音を立ててそれを知らせる。

入り組んだホテルだが、その部屋はすぐに見つかった。

すでに三城は来ているのだろうか。

多少の戸惑いはあったが、幸田は先ほど渡されたカードキーを使いその扉を開けた。



 
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