三城×幸田・クリスマス・編・8



予約済みだったコースメニューがテーブルに並び、食後のコーヒーが運ばれて来るまで二人の間に会話は無かった。

幸田が声を気にして喋らないでいるのもあったし、会話内容を聞かれ万が一男同士とばれないかと恐れたのもある。

だが一番の原因は、三城が何故か徐々に機嫌を悪くしている事だろう。

理由は幸田にはさっぱり解らない。

時間を遡って考えても自分が三城に何かしたとは考えにくい。

そもそも会話が皆無なのだ。

機嫌を損ねる事を言う隙すら無かっただろう。

だったら行動か、とも考えたがそれも思いつかない。

男とばれないように、そして与えられたワンピースが似合うようにと、貞淑な女を(出来る限りのイメージで)演じているのだ。

そこにすらクレームを付けられるのなら「付き合ってられない」と言いたくもなる。

考えても原因は不明で、聞きたくても声を発したくない。

どうすべきかと思案し、三城を見ると視線がピタッと合った。

「、、、、」

条件反射というか、咄嗟の判断というか、目が合うと幸田はニコッと小首を傾げて笑って見せた。

そんな姿の自分を想像しても、とても可愛いとは思えないのだが、他に取るべき行動が思いつかなかったのだ。

「笑うな。」

ドキドキしながら待った三城の反応は、ため息混じりに吐き捨てられた一言で終わり、幸田を落ち込ませるには十分だった。

呆然と無表情にも近い面持ちになった幸田はそっとコーヒーカップを両手で持ち、飲みもせず水面を見つめた。

自分は何をして三城の不況を買ったのだろう。

考えても解らない。

こんな格好をさせたのは三城なのに、何故機嫌が悪いのか。

不満が怒りに変わる事はなく、ただただもの悲しさだけが幸田の胸に募る。

恥ずかしくてたまらない女装をしてこんな場所に居るのに、当の相手は笑いかけてすらくれない。

自分は一体何をしているのだろう。

不意に浮んだ疑問は涙と共にやって来た。


 
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