真夏の夜の・・・編・01



夏がやって来た。

そして由志高校は夏休みに突入した。

昼間から遊び回る学生もいれば、部活動に勢を出す者や大学受験の勉強に励む者など様々であるが、いつもと違う時を過ごしているというのは間違いない。

それは教師も同じだ。

通常の授業が無い今は授業計画の練り直しや書類の整理、研修に追われている。

加えて、由志高校で一番の新米である恭一には様々な雑務も回って来る為仕事量だけで言えば普段よりも多い。

だからだろうか。

連日のうだるような暑さもあり、ここ数日どことなく体調が優れなかった。

「夏バテかな・・・情けない」

この程度の忙しさは先年までよりはずっとましだというのに、身体が追いつかない己にため息が出る。

去年まで務めていた予備校であれば、夏休みは書き入れ時とあり今とは逆に毎日授業に追われていたものだ。

通常のクラスも日数や時間が増加されるし、夏季講習や補修授業、個人面談や講習会やと目の回るような忙しさだったと覚えている。

平日も週末もなく授業が詰まり、朝から晩まで働き約6週間の夏休み期間中片手で数えられる程度しか休みがなかった。

それを思えば、今は随分と楽なものだ。

忙しい忙しいと言えど土日は休みを取れるし、活発な部活動の顧問や担任を持っていない事もあり5日くらいならば纏まった休みもとれそうで、日々にしても自炊する余裕くらいはある。

「春海さんも大丈夫かな。倒れたら大変だし・・・」

三城の務める企業は外資系である為、盆休みは無いがサマーバケーションが長い。

一般の社員も支社長であるレイズも二週間近くを休みに当てるという。

日々多忙を見せる三城だ、きちんと休みをとってほしいと思うのだが、彼の性分で二週間も休むとは思えない。

せめて二人揃った時期に休めれば良いな、と考えながらも互いに予定はまだ白紙状態だ。

「とりあえず、今晩は精の出る食事にしよう。肉かな・・・」

レバニラかウナギか。

咄嗟にはその程度しか思いつかない。

自炊をする日も増えたのでもっと料理のレパートリーを増やしたいものだ。

元々料理が好きでも得意でもあった訳ではないが、三城が喜んでくれるならなんとも遣り甲斐がある。

頑張って少し手の込んだ物を作ってみるのも良いかも知れない。

そうすれば、三城は何と言ってくれるだろうか。

学校帰り、恭一は車を飛ばす。

つい先ほど三城から届いたメールに記されていた早く帰宅できるだろう旨が、恭一を浮足立たせていたのだった。



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