真夏の夜の・・・編・15



ここは病院だ。

このような事をしてはならない。

けれど、此処は個室でもある。

その全てが一瞬で脳裏を駆けめぐり、抵抗も出来ないまま恭一はシーツの上で三城を見上げた。

スーツ姿の三城はジャケットもネクタイもつけたままだ。

それを慣れた手つきで外しながらも、視線を少しも外さない彼に見つめられた。

「去年、入院中はキスしかしなかったな」

「キスだけでも、凄く恥ずかしかったよ」

出会って、そして想いを確かめ合って直ぐ。

ノンケだと知っていた三城との交際は、当初は強い不安ばかりが付きまとっていた。

いつ男はやはり無理だと言われるか、キスやSEXは出来ないと言われるか、考えない日なくそんな中で三城から与えられた口づけは、興奮や快感以上に喜びと緊張が勝っていたと覚えている。

「あぁ。恥ずかしがって、けれど抵抗もせず、身体だけは素直に反応していたじゃないか」

「春海さん・・・」

「俺は手でしてやろうかと言ったが、恭一には断られた」

「だ、だってそんな。まだエッチした事もなかったし、それに病院でそんな・・・」

何度かキスを交わしあい喜びが慣れてくると、次に訪れるのは快感だ。

それに素直に反応した身体の中心が恥ずかしくて、出来る限り三城に知られないようにとしていた。

けれど三城は見逃してくれる程甘くはなく、パジャマと下着の下で形を成すそれに『辛いなら出させてやる』と言ったが、まだ裸体を晒した事もない相手にそこだけを任すなど容易に頷けるものか。

加えて、交際当初の恭一は現在に比べて随分と三城に遠慮をしていたところがある。

容姿は凄く好みで、大企業の部長を務めるエリートで、何よりノンケで。

三城の気持ちを信じ切れていなかったのだろう。

あの頃から比べれば、気持ちだけは対等に居られる気がする今は随分と成長したものだ。

去年を思い出した羞恥から内心唇を尖らせる恭一に、シャツのボタンも上から数個外した三城はふと鼻で笑った。

「今も此処は病院だ」

「そういや、そうなんだけど・・・」

「だがもう、嫌だと言ってもやめてやる気はない。部屋の鍵は掛けているし問題はない」

「春海さん・・・」

恭一を跨ぎ両腕をシーツに突いていた三城は、断言的に言い捨てると互いの胸を密着させた。

彼の片手が恭一のパジャマのズボンに掛けられ、ウエストがゴムのその中にあっさりと進入される。

ここが病院であるという背徳感と、久しぶりの三城の温もり。

身を堅くしているとそれもつかの間、下着の中に差し込まれた三城の手に茂みを撫でられ喉の奥で息を飲んだ。

「んっ・・・」

「やはり、まだあまり無いものだな」

「・・・そりゃぁ・・・・ぁ」

三城の手がそこから離れる。

それを知った次の瞬間には、三城は恭一のズボンを下着ごと膝まで降ろした。

布地に包まれていた部分が外気に、そして煌々と灯る明かりの下に晒され、いたたまれない。

手術の為の剃毛は完全に剃られたのではなく極短く刈られただけであったし、数日経った今はその時よりも延びてはいる。

けれど、それでも元のようであるにはまだまだだ。

不格好なそこを何度も撫でる三城に、恭一の膝は自然と閉ざされた。

「もう、いいじゃないか。それより・・・」

「良くはない。見ず知らずの女にお前の此処を触れられ、まだ俺もした事のなかった剃毛もされたんだ。今ぐらい楽しませろ」

「そんな・・・」

見ず知らずの女といえど看護師で、彼女の仕事だ。

そのうえ今の三城の口ぶりでは以前より彼が剃毛をしたがっていたようであるが、そのような話は聞いた事もない。

三城もそれを解っていない筈はないだろうにわざわざ口にするあたり嫌みか当てつけなのだろう。

けれどもう許してほしい。

撫でられれば撫でられる程、その一帯に鈍い痺れを感じるのだ。

「それに、昨日居た看護師はあの時の女だろ。それも不満だ」

「そんなの僕は知らない・・・ん・・・春海さん・・・ねぇ、もう・・・」

「もう、なんだ?」

「もう・・・止めて」

「止めるだけで良いのか?」

三城の声が、耳元で意地悪く揺れる。

けれどもう耐えられない。

茂みを撫でられる度に感じる痺れがペニスに強度を持たせ、立ち上がったその先端には潤みすら湛えていた。

「・・・触って。ここ、触って」

「恭一、いやらしいな」

「ん・・・」

此処だと言い恭一は茂みを探っていた三城の手首をつかむとペニスへ向かわせる。

閉ざした瞼を薄らと開け三城に向ければ、そこで彼は柔らかく笑った。

嘲笑もからかいも感じられない、どこか優しげな笑み。

それがまた、恭一の中心をドクリと脈立たせた。

「一人で遊んでいたか?」

「してないよ。昨日までは傷も結構痛かったし、それにそんな気分にはならなかったよ」

「そうか。いい子だ」

「・・・じゃぁ、春海さんは?」

「あるわけないだろ。俺は恭一以外で出す気はない」

「そん・・・ぁ」

刺激的な言葉を残し、三城が恭一のペニスを握る。

なんともあっさりと即答するものだ。

それがあまりに早くて、事実であるか疑わしくすら感じられる。

だがそのような事などどうでも良い。

今はただ、三城を感じたかった。

「・・・は、はるみ、さん・・・はるみさん」

「恭一。あまり声を出すなよ。俺は構わないが、誰かに聞かれて恥ずかしいのは恭一だろ?」

「ん・・・」

そう言いながらも、ペニスを握る三城の手は容赦なくそれを扱きあげる。

病室である事も様々な久しぶりが重なった事も、急速に興奮を与えた。

声を出しては行けないと思えば思うほど、こみ上げてしまう嬌声が苦しい。

「まずは一回いかせてやる。だが、恭一だけ楽しんで終わりにはさせられないな」

「ふっ・・・ぅ・・・」

必死で声を押さえているというのに、容赦のない三城が耳元に息を吹きかける。

恭一がそこが弱いと知っていてそうしているのは明らかだ。

「ん・・・ん・・・っ・・・く」

自然と腰が持ち上がり、ペニスを三城の手のひらに押し付けた。

三城の温もりを感じたいのか、快感を追いたいのか解らなくなってしまう。

それが釈然としないというのに、追い打ちを掛けるよう三城は耳殻へ舌を延ばす。

「っ・・・ふ」

耳とペニスを同時に責め立てられ我慢も利かない。

咄嗟に三城の首へ両腕を回した恭一は、背を丸めると唇をきつく結んだまま久しぶりの性を三城の手の中に放ったのだった。


  
*目次*