君だけにオール・グリーン・3


蜃気楼立ち込める公園で、俺がバカみたいに叫んだ言葉は、幸いにも大久保しか聞いていなかった。

遠くで車のクラクションが鳴った。

それはまるでどこか別世界のようだ。

大久保はただ俺を見つめていた。

無表情なのか無感情なのか、その表情からは感情が読み取れない。

「別に、そんな事はしない。ホントだた知りたかっただけだから。」

大久保は一歩近づくと、片手を伸ばし俺の頭を抱き、自分の胸へと引き寄せた。

咄嗟の事に俺は、ドクリと鼓動が鳴り、固まってしまった。

動けない。

動き方が解らない。

嫌だとか気持ち悪いとかそんな事ではなくて。

「無理矢理聞いたみたいになって、ごめん。でも知れて良かった。ありがとう。」

「いや、その」

大久保の声は、思ったよりも暖かくて、とても静かで、俺の脳に直接降り注ぐようだった。

「なんだよ、止めたいのかよ。」

俺は照れ隠しに悪態を吐いた。

それでも離れようとはしなかった。

違う、それは動き方が解らなかっただけなんだ。

「別に、そんなんじゃない。」

「だったら。」

「うん、止めては欲しいと思った。今。でも、俺が言って止める程度なら、初めからしてないだろ?」

そりゃそうだ。

そりゃそうだと思うのだが。

「わかんねぇ・・・・お前に言われたら、止めるかも知れねーだろ!」

俺はまたもや叫ぶように言うと、ガバリと顔を上げた。

きっと真っ赤だと思う。

その上涙が流れて汚いとも思う。

ムスッとした面持ちとは裏腹に、羞恥で一杯なのだ。

グチャグチャだ、俺はいつも。

顔を上げた先にあったのは、大久保の顔は驚いた表情だった。

「ごめん、なんでもない。」

俺は大久保の肩に手を付き、ようやく離れようとした。

勢い余って余計な事を言ってしまったと思った。

気づいてしまったのだ。

逃れられないほどしっかりと。

自分の気持ちに。

俺は、大久保が好き。

だから、行く意味など見出せない学校に行っていた。

席に座り、窓の外や教室を眺めるフリをしながら、チラチラとコイツを見ていた。

この一年半、他の誰一人のクラスメイトの顔も名前も覚えなかったというのに。

こいつだけ。

「行くなよ。」

そんな俺をからかっているのか、どこまで本気なのか、大久保は俺の頭部から手を離すと、しっかりと背中を抱きしめた。

「行くなよ、どこにも。」

切羽詰ったような声だった。

それが何を意味するのか解らない。

「俺が何処に行くって?」

「わかんねーよ。けどお前、どっか飛んでっちまうんじゃねーかって、いっつも思ってた。」

「意味わかんねーし。」

「俺の家、近くなんだけど。」

来ないか、と囁かれたのは耳たぶに唇が触れそうな距離だった。


  
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