君だけにオール・グリーン・5


怖いと思ったのは、行為そのものではない。

もちろん行為も怖くはある。

男とだろうが女とだろうが、そういった事───SEXをするのは初めてだった。

俺は大久保に進められるがままにシャワーを浴び、用意してくれていたTシャツと短パンを着た。

左腕に巻いている包帯はそのままだ。

部屋に戻ると大久保は俺と目を合わしもせず、入れ替わりにシャワーを浴びる為部屋を出て行った。

やはり、怖い。

俺は大久保に裏切られたりしないだろうか。

そう思うと、怖くて怖くて・・・

「切り裂きたい。」

今、ここで、腕に刃をつきたてる事が出来たなら、どんなに安堵を得る事が出来るだろう。

鞄の中にはカッターがある。

切りたい。

俺は、弱くて、バカで、自己中で。

でも、もしここで切ったなら大久保がどう思うかくらい考える事が出来て。

きっと、嫌われる。

これほどに無いと思うほど、嫌悪の瞳で見られるだろう。

俺は、それにも堪えられないだろう。

無意識のうちに膝を抱いて座っており、頭を足に埋めた。

堪えたい。

ここは、堪えたい。

こんな事を思うのは初めてだ、きっと。

何分たったのか、数時間にも思えるほどの時間を感じた時、部屋の扉がガチャリと開いた。

「─お待たせ。」

俺は反射的に顔を上げる。

部屋に入ってきたのは、当然かもしれないが大久保一人で、俺は心底安心した。

何故か、他にも人を連れて来るのではないかと考えてしまっていたからだ。

笑みを浮かべていた大久保だったが、俺を視界に止めると瞬時に硬い表情になる。

大久保と目がかち合う。

「どうした?」

大久保は俺の前に飛んでくると、肩を抱き顔を覗き込んだ。

心配そうに眉が下がっている。

それは俺の為なのだろうか。

「えっと」

「大丈夫だから、さ。」

大久保は、膝を抱いたままの俺を抱きしめた。

「何があったか解らないけど、俺はお前が居てくれたら何でも平気だからさ。」

大久保の声は優しく、ボディーソープの香りも優しかった。


  
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