君だけにオール・グリーン・7


蝉の鳴き声が聞こえる。

クーラーの機械音が聞こえる。

大久保が俺を好きだと言った言葉が聞こえる。

何処からも、嘲笑の笑い声は聞こえない。

俺達は、身体を合わせた。

所謂SEXをした。

女ともやった事がないのに、いきなり男同士でするのはなかなかに勇気がいったけど、嫌ではなかった。

俺は大久保が好き。

だからSEXがしたい。

ただそれだけだ。

見よう見まねでなんとか大久保のペニスが俺のアナルに収まると、痛みよりも感動が大きかった。

「大丈夫?」

「大丈夫。なぁ、気持ち良いのか?」

「うん。でも、それより、嬉しい。」

「・・・俺も」

昔あった映画のタイトルみたいに、純粋なSEXとはこういうものなのかもしれない、と俺は感慨に耽る。

これが幸せなのか。

俺は本当に、リストカットを止めれるかもしれない。

いや、止めるべき理由が見つかるかもしれない。

人間とは、目標を持って、そこに向かって頑張るものなのだ。

きっと。

俺の目標に大久保がなってくれたら、目標である事を許してくれるなら、いいな。

++++++++++


SEXはとりあえず互いに一度づつの射精で終わった。

思春期、やりたいさかりの男ってやつだから、本当はもっとさせてやりたかったけど、大久保が「必要ない」と言ったのだ。

「そりゃしたいのはしたけど、お前の身体が壊れる。」

そう言って抱きしめられ、俺はドキドキした。

愛とはこういう事なのかもしれない、とまた思う。

俺達は全裸のままベッドの中で寄り添っていた。

身につけているのは、ただ一つ、俺の包帯だけ。

それに指先で触れながら、大久保に何故おれがリストカットをしているのを知っていたのか聞くと、

「ずっと、見ていたから。お前を。」

とはにかんだ笑みを浮かべてみせた。

俺もお前をずっと見ていたんだ、とは言えなかった。

恥ずかしかったからだ。

それに。

大久保が俺をずっと見ていたなら、俺が大久保を見ていたのも知っているかも知れない。

それを知るのはもっと恥ずかしい。

「包帯の中、見せて、って言ったら怒る?」

「気持ち悪いだけだろ。」

「うーん。そうかもしれないけど、俺はお前の全部知りたい。」

そう言うから、俺は意を決して、包帯を外した。

相当の覚悟でだ。

本当は嫌だった。

嫌、というより怖かった。

でも、大久保は俺の肛門にも触れたのだから、大丈夫。

大久保は俺を嫌わない。

何度も何度も自分に言聞かせた。

ハラリと腕から包帯が滑り落ちる。

「──触って良い?」

「うん」

敏感な肌を大久保の指が撫でる。

大久保はいやに真剣な顔で何度も優しくそこを撫でた。

「かっこいい事とか言えないけどさ。俺はやっぱりお前が好きなんだ。お前が何をどうしようが、嫌いになるなんて想像出来ない。たとえば浮気とか犯罪とかしてたとしてもさ。」

「・・・うん」

「だから、リストカットくらいじゃ嫌いにならないよ。だってちっとも気持ち悪くないし。」

「ありがと──」

嬉しい、とは違う、複雑な感情が俺の中に芽生えた。

どんな言葉が妥当なのかわからないけど、幸福な感情だというのは間違いない。

俺は大久保を信じる。

それしか出来ないけど、信じようと思う。

「拓実【たくみ】、って呼んでいい?」

「俺も啓次って呼んでいいか?」

俺達は笑い合い、ベッドの中で抱きしめあった。


  
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