レンズ越しの・・・編・23



一つの涙をきっかけに、直哉は賢明に喉の奥で堪えていた物を吐き出した。

「あっ・・・あぁ・・・やっ・・・あぁ」

一度声を放ってしまうと、止め方が分からない。

あれ程堪えられていたのが嘘のように、次々と唇を吐いていく。

涙も止まらず、腰はガクガクと震えた。

羞恥心は増えるばかりで、一体何が一番恥ずかしいのかももはや分からなくなる。

「はっ・・・はぁ・・・ン・・・レ・・・レイズ・・・やめ・・・」

止まらない嬌声を繰り返す直哉に、依然クラインは内部を刺激する手を止めない。

一番敏感な部分ばかりではなく、その周囲の内壁をも撫でまわすので、変則的なそれにやはり声が上がるった。

バスルームに直哉の嬌声がこだまする。

耳を覆いたくなるような恥ずかしさだったが、両手は身体を支えるのに一杯でそのような事など到底出来ない。

「レ・・・レイズ、もう・・・もうやめ・・・」

「どうして?」

「だ・・・て」

「ナオヤは気持ち良いのだろう?良い声を沢山出している」

「ごめ・・・ん、なさい」

「何を謝っているのかな?」

「だ・・・って、その・・・あっは・・・っ声が・・・止ま・・・」

浅ましくなりたくなかった。

みっともなくもなりたくなくて、性に溺れるなど考えたくもない。

十代の若者ならばともかく、もう二十代も半ばで分別が必要だ。

だが何をどれだけ考えたところで、虚しく頭の中を通り過ぎるだけ。

開いた唇からは、やはり甘やかな声を止められなかった。

「ふっ・・・ん・・・」

「ナオヤ・・・」

ようやく、クラインの指が直哉のそこから離れた。

抱かれていた背を離した距離で呟かれた名にどのような色が含まれていたのか、察する事も出来ない。

「はぁ・・・ぁ・・・」

迫り来る快感から解放され、胸で息をついた。

あのタイミングで離れたという事はつまり、直哉の返答にクラインが答えたという事なのだろう。

無意識のうちに彼を振り返る。

だが、目に入ったものの判断が出来るよりも早く、クラインは再び直哉の腰をつかみ直すと、ボディーソープの泡の残る尻に、熱く硬い、彼を押しつけた。

「・・・ぁ」

「今日は、いつになく声を出してくれると、喜んでいたんだ」

「・・・え?」

「私は、素直になるナオヤが見たかった。ナオヤはいつも、遠慮をしているようだからね。未だに、ビジネスシーンと変わらない話し方であるのも、その証ではないかと」

「あ・・・レイズ」

背後から回した指で、クラインは直哉の胸を撫でる。

オレンジ色の明かりが溢れたそこで、彼は苦笑を浮かべているようにも見えた。

直哉がクラインの事で悩んでいたように、彼もまた直哉について思うところがあったようだ。

いつも悠然と、自然と堂々としている彼に、悩むものなどないのだと考えていた。

ふと、胸が軽くなる。

それと同時に、身体の奥の欲望がぐずぐずと強くなった。

「そうかも、知れません。ずっと遠慮を、していました」

「ナオヤ・・・」

「ありのままの自分を、見せる勇気がなかった。浅ましく、貴方を求めてしまうと、知られるのが怖かった。ですが、もう止めにします」

レストランでの彼の言葉と、今し方聞いたばかりの言葉。

それらはどちらも、直哉を支える。

もう、内側を隠す必要はないようだ。

腰を、突き出す。

それだけでも非常に恥ずかしかったが、それ以上に求める物があると知らせたかった。

「あ、貴方が、欲しい・・・欲しいと、あの・・・」

「あぁ、ナオヤ」

クラインの手が、胸から離れる。

尻に当たる、彼のペニスの感覚。

それが一瞬離れたかと思うと、次の瞬間にはアナルにその先端が突きつけられた。

「ン・・・」

「ナオヤ、知らなかった。そのように、考えていたんだね。まさか・・・ただ、遠慮をしているのだと思っていたが、そんな・・・私がナオヤを、浅ましいなどと思う筈がない」

「レイ・・・」

「なら、私はどうなる?こんなにも、ナオヤを求めてならないというのに」

「レイズ、僕は・・・」

「愛してる、ナオヤ。もっと、もっとナオヤを、ナオヤの本心を、見せて欲しい」

「・・・、は、はい・・・あっ」

直哉の腰を掴み直したクラインが、そのペニスを直哉のアナルに突き立てた。

熱い。

指などよりも熱く確かな質量で、直哉の内部を満たしてゆく。

まるで胸を捕まれるような感覚だ。

彼を愛している。

彼になら、誰にも見せられない部分さえ見せられると、直哉の中で何かが大きく変わった。

「ふっ・・・ん・・・あぁ・・」

「可愛い・・・ナオヤ。とても・・・」

「レイズ・・・きもち、いい・・・もっと」

「あぁ。ナオヤのリクエストになら、なんなりと応えよう」

ドンッと、強く彼のペニスが直哉の奥深くを突く。

指だけでは叶わない快感、せり上がる快楽が止められない。

だがもう、それは止める必要もない。

壁に腕を、肘も付き身体を支える。

そうして腰も尻も彼へと差し出すと、オレンジ色の明かりに満たされたバスルームで、直哉は心からクラインを求めた。




  
*目次*