清水の波紋・編・21



燃える身体を持て余し、幸田はシーツの上であられもなく膝を開いていた。

三城と触れ合うのは随分と久しぶりで、体内に溜まった欲情は羞恥心をも悠に越えてゆく。

「あっ・・・はっぁ・・・春美さん・・・」

中央で立ち上がるペニスを三城に握られ、幸田は背に痺れが走った。

三城の出張が延長となったと知らされた日、いつ彼に会えるかわからないという寂しさが募り一度だけ自身を慰めはした。

だがそんなものはだた虚しさを与えるばかりでしかない。

快感などほんの一瞬。

後から襲い来るのは、一人この広いベッドで眠らなければならないという侘しさだ。

「恭一、もっと声を聞かせてくれ」

「はっ・・恥ずかしい・・・」

「それが可愛いんだ。いいだろ?俺しか見ていないし、聞いていない」

「そういう問題じゃぁ・・・・んっ」

知り尽くされた身体。

弱いところを責めるようペニスを扱かれれば、上ずった声音は喘ぎへと移り変わる。

彼の手は不思議だ。

まるで自分とは違う。

大きくて骨ばりしっかりとした彼の手は男らしくて、見ているだけでもとても好きだが、その手が、指が、身体の上を這うのはもっと好きだ。

良いとこばかりを狙われるのも一つだろうが、それだけではないと思う。

どこがどうだとは解らないが、けれど彼の手で扱かれると、これでもかと快感が上り詰めてしまうのである。

「春海さん・・・やっ、やだ・・・もう・・・」

「どうした?もういきそうなのか?」

「ごめん・・・・」

「何故謝る。手と口、どっちが良い?」

「・・・。・・・、くち・・」

ふと、三城が笑った気がした。

霞む瞳ではそれをはっきりと確認出来ないまま、覆いかぶさっていた彼が居なくなるとペニスに鋭い熱を感じた。

三城の唇がペニスを食み、そして舌がそこを舐め上げる。

熱く柔らかい舌先を裏筋に感じれば、元々絶頂の淵に居た幸田はひとたまりもなかった。

「あっ・・・あっ、はぁ・・・あぁぁっあぁ・・・・んっ・・」

荒がる吐息。

唇を閉ざす事も出来ず胸で呼吸を繰り返し、無意識のうちに膝は大きく広げられてゆく。

そんな風にされてしまったら。

優しいばかりの舌使いで繊細な部分を責められれば我慢など出来なくなる。

縮み上がった睾丸を握られたのが合図となったように、幸田は胸を晒すように背を反らすと数日振りの欲望を三城の唇の中へと放った。

「は・・・あっ・・・ぁ・・・・はぁ・・・」

「さすがに、濃いいな。一人ではしていなかったのか?」

「・・・聞かないで」

「何故?俺はただ知りたいだけだ」

「言わないよ、そんな事・・・」

旨いとは言い難い筈の白濁を難なく飲み下した三城は、さも何でもないとばかりに平然としている。

汗と精液、それから三城の唾液で汚れた幸田の下腹部をティッシュで綺麗に清めでから、ようやく思い出したかのように彼は枕元のペットボトルから水を口にした。

それは口直しの為ではなく幸田を気遣っての事だと気がついたのは、彼と身体を交じり合わせるようになって程なくした頃だ。

たとえ彼が平気で己の放ったモノを飲み干せたとしても、その唇でキスをするのは出来れば遠慮したい。

ペットボトルをベッドヘッドへ戻した三城がベッドの上で力なくしている幸田の隣へ横たわる。

互いに全裸の肌は、シーツとそして相手の体温だけを感じられた。

「春海さん、僕も春海さんの、したい」

「しなくて良い」

「・・・。いっつも春海さんばっかり」

「今度な。今は早く恭一の中に入りたい」

身体を起こしかける幸田を肩を押さえつけ制止させた三城は、その耳元でわざとらしく息を吹きかけながら囁いた。

「んっ・・・そんな、それもいっつも・・・」

「可愛い、恭一」

耳が弱いと知っての責め苦は、耳たぶを甘く噛まれれば身体は震えるばかりで動かなくなり、幸田は達したばかりの身体で耐えるしかなかった。

いつも三城が丁寧に愛してくれるように、自分も彼を愛したいと思っているというのに。

大抵の場合三城はそれを受け入れてはくれず、少しだけ不満でもある。

だが、そのような『不満』が膨れ上がるよりも早く、幸田は更なる快感に押し流されていった。

「っん・・・・」

いつの間にか潤滑油を纏わせた三城の指が、幸田の後孔を撫で、そしてゆっくりと体内へと押し進む。

ペニスへの刺激以上に久しぶりの感覚。

狭い内部は、けれど僅かな刺激でその力を緩めてゆく。

数度出し入れをされただけで余裕をみせたそこへ、三城の指は本数を増やしては彼が収まれるだけの場所を求めた。

「狭いな。ここは随分と使っていなかったようだ」

「あ・・・っあたり、まえじゃぁっ・・・ぁあ・・」

「貪欲だ」

「っ・・・・はるっ・・ん」

そんな事を言わないでくれ、という羞恥からの苦言は、残念ながら幸田の口から放たれる事はなかった。

優しく荒らしまわされる内部。

先ほど達したばかりの身体に再び熱が宿され、中央の化身が立ち上がると、解していた三城がそこからいなくなった。

「春海・・・さん」

「いれるぞ。力、抜いていろ」

「んっ・・・」

知らぬ内に閉ざされていた瞼を持ち上げると、隣に居た筈の三城が正面に居た。

唇に微笑を湛え、けれど瞳は焦燥の色すら伺えて。

ぐったりと重くもはや己の意思では動かす事も出来ない足を、三城が抱え上げる。

秘められた場所を彼の眼下に晒されるとさすがに羞恥を感じはしたが、そのもつかの間。

今しがたまで彼の指に愛され今は喪失感に飢える場所へ、熱く重い感覚を知った。

それが何であるかなど考えるまでもなく、幸田は三城に抱きしめられながらその彼の楔を体内へ打ち込まれていった。

「あっ・・・はっ・・・・」

「恭一、愛してる・・っ」

熱いのは体内、そして彼の腕の中。

彼のペニスを奥まで収められながら、三城は両腕でしっかりと幸田を閉じ込めた。

「僕も、好き・・・春海さん、大好き」

「どんなに・・・向こうに入っている間、どんなに恭一が恋しかった事か解るか?」

「春海さん・・・」

「早くこの腕で抱きしめたかった。恭一、ようやく、恭一を感じる事が出来た」

三城の唇が、唇に注がれる。

口付けを交し合いながら、三城はゆっくりと律動を開始した。

指などとは比べ物にならない質量のペニスは、けれど彼に愛され続けた内部はその形を愛しむかのように包みこむ。

スピードを上げる事のない三城は、ジクジクともどかしいまでの刺激を与えられた。

これではなかなかに達する事は出来ないだろう。

けれどその分、彼を感じ続ける事が出来る。

「はっはるみ、さん・・・」

「可愛い、恭一。俺にだけだ。そんな姿を見せて良いのは」

「わかってる。春海さんだけ・・・春海さんにしか、そんな・・・あっ」

キスの間に睦言を刻む。

そして再び唇を合わせると、幸田は三城の背を抱き返した。

広く、大きな背中だ。

この背に背負ったものはきっと、平凡に教師をするだけの幸田には想像も出来ないものなのだろう。

それを代わる事は出来ない。

けれど、今こうして二人で居る時くらいは、その荷を降ろせていれば良いなと、ぼんやりと思った。

「ずっと、こうしていたい」

「あぁ、そうだな」

いつになく、じっくりと愛を確かめ合う。

互いの気持ちは知っている筈だというのに、けれど改めて感じる三城からの愛情に、そして緩やかに強い快感から、幸田は瞳を潤ませた。

「春海さん、どうしよう。すっごく、気持ちいい」

心も身体も。

こんなにも満たされている。

そうだな、そう囁かれた声を聞きながら、幸田は自らもまた三城に同調するよう腰をふるったのだった。




  
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