三城×幸田・それぞれの春・編・1
(プロローグ)



1月のある日。

成人式も過ぎ、受験は大詰めを迎え、また一方では大学合格の内定者もぞくぞくと現れ始める頃。

幸田の自宅の電話が鳴った。

年が明けてからは、互いの休みに関係なく三城の家に入り浸っていた幸田がその電話を取れた事すら奇跡に近い。

コールが3回鳴り終わらないうちに受話器を取ると、相手は意外な人物からだった。

「大石先輩?」

大学時代の先輩で何かと幸田を気にかけてくれていた人物なのだが、卒業後は年賀状のやり取りくらいしかしていなかった故驚いた。

その大石から何の連絡だろう。

恩師の訃報などだろうか。

幸田の考えをよそに、続けられた大石の言葉は予想を遥かに越える驚くべき物だった。

「うちの高校で教師をしないか?」

「っ!?」

突然の申し出に幸田は言葉も出ず受話器を握り締めたまま、呆然と何も無い壁を見つめ続けた。



*目次*