三城×幸田・それぞれの春・編・10



そんな事答えられない。

三城の淫猥な質問に、幸田は自分の顔がカッと朱面したのが解った。

瞳は潤み、唇は震える。

何故そのような事を聞くのかと、こんな時でも見惚れてしまう端正な顔立ちを恨みがましげに眺めた。

人を小ばかにしたような笑みなのに、そこに愛を感じるのは惚れた弱みの目の錯覚だろうか。

そして、自分はこの顔に心底弱いのだと改めて再認識すると、幸田は諦めたように小さくコクリと頷き、照れ隠しに顔を背けた。

顔で恋人を選ぶ趣味はしていないと思っているのだが、別次元で三城の顔には弱いのだ。

付き合って数ヶ月が経った今でも、何度と無く目を奪われる。

笑顔も不機嫌そうな顔も、疲れた顔も。

三城の顔が大好きで、愛しくて。

今だって心では不満を抱いているのに、三城に見つめられてしまっては従ってしまうのだ。

「そうか。」

満足げに呟いた三城は、幸田の頭を撫でながら額に唇を寄せた。

なんだかんだと言っても、これが幸福なのだと思う。

三城と会えなかった数日。

幸田は欲望よりも寂しさが募り、三城を想いながら何度も自身を慰めたのだ。

性器へ刺激を与えればそれなりの快感と吐精は叶うのだが、後に訪れるのは開放感ではなく空虚感だけだった。

会いたいと想いが募る。

今生の別れをした訳ではないのだからと、自分に言聞かせたところで寂しさが消えるわけではない。

声を聞いてもメールを見ても、離れている事は事実。

この麻布の家に三城はいない。

ここは自分の家ではない。

そう思うと、いくら三城が「気にしない」と言っても、この家に一人留まり続ける事が出来なかったのだ。

「三城さんは?三城さんはどうなんですか?」

10日ほどの間、何もせずに過ごしたとは思いがい。

お返しとばかりに唇を尖らせ問う幸田に、三城はフッと失笑を浮かべて見せる。

「『ご想像にお任せします』」

ずるい。

だがそう幸田が言う前に、三城は幸田の自身を握ると上下に扱き始めた。

「あっそ・・んな、いきなり。」

「どんな風に触ってたんだ?一人で」

三城は幸田の耳に唇を寄せ、バリトンの声を潜ませると意地の悪い口調で言った。

腰に来るとはこの事だろうと思われる美声を、更に効果的に使うあたり憎らしい。

「やっそんな・・・」

今度こそ言えないと幸田は首を左右に振る。

羞恥を快感に感じる趣味は持ち合わせていないのだ。

久しぶりの三城の手と指で扱かれた自身は、どんどんと大きく形を成していく。

張りの出た先端を指の腹で撫でられると、鼻から甘い声が漏れた。

「んっ」

「それとも一人じゃなかったのか?」

そんな事が、幸田が他の人と性的な関わりを持つなど思ってもいないくせに、今日の三城は本当に意地が悪い。

「違っ・・・そんな事ある訳・・・」

「だったら。何かを見て?それとも俺の事を考えて、触ったのか?」

ギュッと自身の先端を絞り込むように握られると、強い快感に混じり軽い痛みが幸田を襲った。

「あっ・・」

「言えよ。」

幸田は耳が弱い事を重々承知の上で、三城はわざわざそこを舐め上げる。

ザラリとした感覚が、耳の内部を犯してゆく。

先端を握られながら鈴口と耳を同時に攻められては、強すぎる快感が辛い。

「み、三城さんの、事・・考・・えて・・・」

吐息に混じったような声で、幸田は必死に言った。

腰が無意識に揺れる。

放ちたい。

欲望を。

「よく出来ました。」

恥ずかしくて恥ずかしくて、憤死モノだというのに、その三城の笑みがあまりに優しいから。

愛されていると認識せずにはいられない表情を浮かべるから、幸田は羞恥すらも忘れてしまうのだ。

大好きで大好きで。

絶頂の放出は感情を高ぶらせ、白濁と共に涙を流しながら幸田は三城に抱きついたのだった。



 
*目次*