三城×幸田・それぞれの春・編・13



「三城さん、もう・・ダメあっ、、っ」

あれから何時間が経っただろうか。

そして幸田は何度絶頂を迎えたのだろうか。

壁には時計が掛かっているものの、そんな物を確認する余裕などあるはずもなく、数度目の射精を放った幸田はとうとう三城の腕の中で意識を手放した。

「・・恭一?」

ぐったりと横たわる幸田の表情が、苦痛から穏やかなものに変化し寝息が聞こえてくると、三城は安心と諦めからため息を吐いた。

そして「またやってしまた」、と自責の念が襲う。

幸田の限度を弁えずに求めてしまう癖がなかなか治らない。

毎度後悔を感じても、いざ行為が始まるとそんな事は忘れてしまい、欲のままに幸田を翻弄してしまうのだ。

思春期も早いうちに強い性欲など無くなったと思っていた。

SEXなんて体内に溜まるものの処理程度にしか考えていなかったのに、今はどうだ。

幸田が愛しくて、欲しくて、誰にも渡したくなくて。

いっそ腕の中で壊れてしまえばいいのにと思う。

けれど本当に壊してしまいたい訳があるはずもないのに、つい高まる感情を抑えられず、ぶつけ散らすように幸田を抱いてしまうのだ。

それがどれほど幸田の身体に負担をかけているのか、想像するに過ぎないのだが、見るからに辛そうなのくらいは解る。

だというのに改める事が出来ないなんて、自分がこんなにも自制心のない人間だとは知らなかった。

「後悔、なんて一番嫌いな行為だというのにな。」

三城は誰の耳にも届くはずのない独り言を呟くと、幸田の体内ですっかり萎えてしまった自身を引き抜いた。

手を伸ばしティッシュを取るとさっと自身の汚れを拭い取る。

眼下で眠る幸田の頬をそっと撫でると、生きている証の熱が伝わってきた。

いつまでも見ていたい寝顔ではあるが、実際にはそうしてはいられず、三城はベッドから降りると全裸のまま隣接するパウダールームに向う。

壁際の棚からタオルを数枚取り出し冷水で濡らすと硬く絞り、同じ棚に置かれたバスローブを一枚持ってベッドルームに戻った。

幸田は先ほどと同じ恰好のまま、小さな寝息を立てて眠っている。

「無防備だな。」

さすがにこれ以上幸田に無理をさせれないのだが、気をぬけばまた抑えられなくなってしまいそうだ。

三城は持ってきたタオルで幸田を清めてやり、慣れた手つきで裸の身体にバスローブを着せた。

「んっ・・・」

「寝ていろ。」

身を捩り鼻を鳴らす幸田の頭を撫でながら、三城は優しげに耳元で囁いた。

三城の声が届いたかは不明だが幸田は再び深い眠りに落ちたようで、三城は静かにその場を離れ再びパウダールームに向かった。

全裸の為パウダールームを突っ切り、そのままバスルームに入るとシャワーのコックを捻る。

すぐに出てきた程好く熱い湯が全身を包み込み、汗やさまざまな体液で汚れた身体を洗い流してゆく。

今日の三城は、自分でも目がそらせないほどに疲労が溜まっていた。

長時間のフライトでの帰国、その後会社に戻り部下への報告。

それに加え、近頃社内で少々面倒を抱えている事に対するストレス。

今回の出張もその件に関する仕事も含まれていた。

体力的にも精神的にも擦り切れそうになっていたが、持ち前にプライドの高さでなんとかギリギリに持ちこたえていた。

そんな折、予期もせぬ幸田の訪問はどれほどの救いとなっただろう。

疲れていたはずの心も身体も、瞬時に回復した。

幸田をこの腕に抱き、身体を感じる事で、溜まっていた鬱積が塵一つ残さず消え去ったのだ。

三城は思い出し笑いで緩む頬を堪え、頭上からシャワーを受けた。

幸田の表情、声、身体に触れた感触。

その全てが愛しい。

「それにしても・・・」

まさか自分が恋人の、しかも男を介抱し、身体を拭いてバスローブを着せたりする日が来ようとは、つい半年前までは想像もつかなかっただろう。

人は変われば変わるものである。

そして、三城はそんな自分を嫌いではなかった。

今しがたまで身体を重ねていたというのに、脳裏で微笑む幸田が実際にすぐ近くにいると思うと離れている時間がもったいなく感じ、三城は身体だけを洗い早々にバスルームを後にしたのだった。



 
*目次*