三城×幸田・それぞれの春・編・2



元々幸田は高校の数学教師を目指していた。

猛勉強を重ねて教育学部を卒業したのだが、少子化の影響を受けてか幸田を受け入れてくれる高校は無かった。

その時にはすでに両親もなく、面接を受けた高校が全て不合格だった事への落ち込みもあり、就職浪人をする気力も残っていなかった幸田は比較的給与の良い今の予備校へと就職を決めたのだ。

無事希望する学校へと就職をしていった友達を傍目に、企業に就職する友達よりはマシだと無理矢理自分を納得させていた。

その為、今でも高校教師への憧れは非常に強く、大石の誘いは何とも魅惑的なものだ。

後日直接会って話を聞く約束をし、幸田は電話の横に置いてあったメモに日時を記し電話を切った。

通話を終えた受話器を電話に戻すと、幸田はそのメモを見つめる。

簡単に話を聞いた限りでは、良い話と言う以外のなにものでもない。

大石の勤めるその高校は都内でもそこそこのレベルで、進学校で無いが故に自由な校風が人気の学校だった。

野球と水泳が強い事でも有名で、過去にプロやオリンピック選手を輩出している。

もしもここで教える事が出来るのならば、どれほど楽しく幸せだろう。

高校で教鞭を取るなど諦めていた夢だ。

想像するだけで幸田の心は弾む。

大石の話しでは、幸田に当面担当クラスは無いらしい。

クラブ担当などの細かい事は決まっていないが、だとするなら土日は休みになるだろう。

三城と休みが同じになるのだ。

当然共に過ごす時間が確実に増えるだろう。

公私共に充実する事は間違いなく、幸田の胸は温かい物で満ちていった。

三城もきっと喜んでくれるだろう。

緩む頬を押さえながら、大石との約束の日を心待ちに待ったのだった。



 
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