三城×幸田・それぞれの春・編・41



一抱えでは持てない贈り物の数々を、小分けにして一旦ベッドの上に移動させた。

スーツはクローゼットに、シャツは箪笥に、とあるべき所に直す方が合理的だという事は解っているのだが、まだそんな気にはなれなかったのだ。

それらを見ていたかった、と言えば乙女チックだろうか。

「数万・・じゃないよな。何十万・・できくのかな・・・」

今までも三城から様々な物を貰ったが、一度にこれだけの数となると初めてだ。

贈り物の合計金額を考えてしまうとうい失礼極まりない行為も、幸田が生粋の庶民だと考慮して許してほしい。

無理に視線を外し後ろを振り返ると、贈り物が無くなった場所には乱雑に散乱したダンボールと梱包材が見えた。

こちらも量が量で、思わず重いため息を吐いてしまう。

だが放っておける訳もなく、幸田はそれを片付け始めた。

立体のダンボールをカッターで切り開いてゆく。

それをひたすら繰り返した。

無心で作業をしいると脳裏を過ぎっていくのは、ベッドの上に鎮座する物物とその送り主の事だ。

随分と感じていない声や表情を思い出し、愛しさが募る。

会いたくてたまらない。

「よし」

全てのダンボールを平らにしそれを紐で一つに縛り上げる頃には幸田の気持ちは固まり、ローテーブルの上に置きっぱなしにしているノートパソコンを起動させた。

あれだけのダンボールを切り開いて紐で縛るというのはなかなかに疲れたが、だが一息ついてしまうとまた決心が鈍ってしまいそうだった。

幸田は真面目な面持ちでPCに向かい合った。

メールフォームを呼び出すと、三城に宛てたメールを打ち始める。

ここ数週間の中では一番サラリと書けていると思う。

大まかな内容は、贈り物に対するお礼と近況報告、それから三城の身体を気遣ったありふれたものだ。

それでも幾度と訂正を加え、たいして長くは無いメールを打ち終えた時には、夜も夕食時を軽く越えているような時間になっていた。

「これで・・よし」

何度も読み返した。

三城の気を悪くさせないか、想いは伝わるか、誤字脱字があってもきまらない。

ドキドキと妙に鼓動を高鳴らせながら送信ボタンをクリックする。

「ふーっ」

無事に「送信完了」の画面が現れると、大きなため息を吐き出す。

一気に肩の荷が下りた。

あの日からずっと胸に抱え、日増しに大きく重くなる何かを捨て去ったようだ。

三城からの返答が無ければどうしよう、あったとしてどんな物なのか、と考えるとまた嫌な緊張が走るのだが、暫くは考えない事にした。

現在だと、向こう時間で夜中ではないだろうか。

「お腹空いたな。」

そういえば昨日予備校の帰りに遅めの夕食を摂ったっきり、ほぼ丸一日何も食べていない。

殆どを寝ていたとはいえ、緊張から解放されてみると途端に空腹感に襲われた。

「行くか。」

幸田はPCをシャットダウンし、立ち上がった。

その表情はどこか晴れ晴れとしたものだった。



 
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