三城×幸田・それぞれの春・編・42



ローテーブルの上に置かれた携帯が着信音を響かせると、幸田は思わず手にしていた缶ビールを取り落としそうになった。

携帯がバイブレーションでローテーブルの当たるカタカタという音に混じり聞こえてくるそのメロディーは、紛れも無く三城からのメールにのみ設定したものだ。

「来た・・・」

幸田が三城のメールを送って丸二日。

焦燥と不安がつのり、つい悪い癖とは知りながらもアルコールに逃げていた所だった。

幸田はバイブレーション以上に震えているのではないかと思われる手つきで携帯を取り上げた。

ゴクリと生唾を飲み込み、メールを開く。

「・・・・・」

それは明日帰国をする旨と、飛行機の到着時間が書かれているだけの簡単なものだった。

「明日は、休みだ。」

メールには愛の言葉の一つも無かったが、一言だけ「会いたい」と添えられていた。

会いたい。

自分だって、三城と同じくらい、いやそれ以上に会いたいと思っている。

一分一秒でも早く会いたい。

幸田はすぐさま、もつれるような手つきで返信を打った。

『出迎えに行ってもいいですか?』

『かまわない』

数分と待たずに返って来たメールは先ほど以上に簡潔な物ではあったが、幸田には気にならなかった。

明日、24時間もせずに会えるのだ。

会うのは実に20日ぶりくらいだろうか。

幸田は緊張に胸を高鳴らせ、頬が綻ぶのを押さえる事が出来ずに、携帯を抱きしめたままベッドの上に転がったのだった。



 
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