三城×幸田・それぞれの春・編・50(エピローグ)



三城が「買った」と言っていた新居とは、なんと六本木にある高層マンションの上層階の一室だった。

「どうせなら今より会社に近い方がいいし、ここなら山手線沿線だからお前も便利だろ?」

渡された間取り図を唖然と見つめる幸田に三城は事も無げに言ってのけたが、「そうですね」とは簡単に頷けない。

当然の事ながらその価格は目玉が飛び出て帰って来ないほどの金額だったからだ。

『こんな「0」の羅列、見たいことないよ・・・』

しかし当初は困惑しかなかった幸田も、引越しの準備も後半になると開き直るというか楽しみな気持ちが増していった。

「恭一、見てみろ。ここを寝室にして、こことここが俺とお前の書斎だ。書斎もクローゼットも同じ大きさで二つあるのが気に入ってな。」

屈託無く話す三城を見ていたら、細かい(多額では有るが)事なんて気にしていたら悪い気がしたのだ。

純粋な本心を言えば三城との新生活は嬉しいに決まっているし、この家もとても素晴らしいのだから素直に喜べばいい。

そして三城が何度も

「俺達の家だ」

と言った事も幸田に安堵と決心をつけさせたのだろう。

「恭一、早く来い行くぞ。」

「はい、今行きます。」

幸田は数ヶ月通った三城の部屋に背を向けた。

両親を亡くしてから一人過ごしていた阿佐ヶ谷のアパートも既に引き払っている。

今日から、新しい生活が続いていく。

二人の家で。



++あとがき++
*目次*