蒼穹を往く奏楽・4




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先ほどの怒号から考え、イスハークは決して機嫌が良くはなさそうだ。

このような時は彼も一人で居たいかとも思ったが、とはいえ拓深も他に行く場所はなく、手にした濡れた本もどうにかしなくてはならない。

ガノンと入れ違いに遠慮がちに船長室へ入室すると、白いシャツを羽織り袖を捲った格好のイスハークは視線だけで拓深を見やった。

「・・・拓深か。どうした、手伝いはもう満足したのか?」

「うん。僕が居ても、邪魔みたいだから」

この船で拓深が役に立てる事などそう多くはない。

体力も腕力も知力も、何も持っていないのだから当然だ。

だが、だからといってこの船長室に居るというのも、決して邪魔にならない訳ではなさそうだ。

ここはイスハークと拓深の寝室でもあるが、イスハークの仕事部屋でもある。

どこに居ても邪魔にしかならないのが現状かと、本来海の男ではない己にため息すらこみ上げた。

「そうか。ならここに居ろ」

「ここも、邪魔じゃない?イスハーク、仕事あるでしょ?」

「構わない。今は仕事らしい仕事もない。それに・・・」

「え?」

「今は拓深が欲しい」

「イスハーク?」

木製の大きな机に身体半分向かっていたイスハークは、その椅子から立ち上がると入り口で突っ立っている拓深へ腕を伸ばした。

数歩歩み寄られ腕をとられたかと思うと、強い力で抱き寄せられる。

ほんの一瞬の間に、拓深はイスハークの腕の中に居た。

「気晴らしだ。付き合ってくれるだろ?」

言いながらも、イスハークの手は拓深のシャツの裾から素肌へと這い上がる。

やはり何かに苛立っているのか、その手つきはどこか荒い。

彼の指が、背中を這い、そして胸へと延ばされた。

「・・・ぁ。イスハーク・・・」

「なんだ?待てとでも言うのか?」

「そうじゃ・・・なくて。聞きたい事が・・・」

イスハークの指が、拓深の胸の飾りを弄る。

元の世界で拓深の身体に施された数個のピアスは、イスハークの強い希望でそのままだ。

胸を摘まれ、ピアスを引かれ。

そうされただけで、イスハークにより真の快楽を知るようになった拓深の身体は、熱くなってゆくのを感じた。

「聞きたい事だと?そんなもの、後でいくらでも聞いてやる。今は・・・俺に従え」

「んっ・・・あ・・・」

彼の手が腰から拓深のズボン中へ差し込まれ、申し訳程度の下着を無視しペニスを握られる。

乳首を弄られただけで反応を見せかけていた拓深のペニスは、イスハークに握られればその強度を増すばかりだ。

腰が震え、抗えなくなる。

この船で唯一拓深だけが成し得れる仕事。

それはイスハークと愛し合う事だ。

もちろん普段は彼とのSEXを『仕事』などと考えている訳ではないが、見るからに機嫌の悪そうなイスハークは船員にとって有害であり、身体を使ってでも彼を宥められるのは、拓深を置いて他にいない。

拓深は手から濡れた本を落とすと、イスハークの胸を軽く押した。

「イスハークの、好きにして」

「良い返事だ」

身体を離され、すぐ後方のベッドへその身を倒される。

そして拓深の頭がそこへ付いたと同時に、イスハークの唇が唇に重ねられた。

「んっ・・・ふっ・・・」

「拓深・・・」

荒々しい口づけ。

ただイスハークの好きなように蹂躙されているだけにも思えるそれであったが、けれど舌を絡み合わされるうちに、その想いも薄らいでゆく。

結局のところ、彼が好きで、彼とのSEXが好きなのだから、大抵の事は拓深にとって苦ではない。

「イスハーク、好き、スキ・・・」

「あぁ、俺もだ。拓深、可愛い、拓深・・・」

イスハークの唇が頬に、そして首筋からシャツを肌蹴させられた胸へと落ちてゆく。

そうして直ぐにそれは下肢部へとゆくと、彼はズボンと下着を拓深の足からあっさりと奪い去り、隠すものの無くなったそこへと唇を向けた。

「いつ見ても、拓深の此処は可愛い。小さくて、少年のようだ」

「っ・・・ん」

元の世界に居た時と変わらないままなのは、ピアスだけではない。

ピアスのつけられたペニス。

その根本に本来あるべき茂みも、イスハークの意向により今でも全てそり落とされていた。

元々拓深はこの手の羞恥心が薄いので、イスハークが喜ぶならそれで良い。

隠すモノのない、イスハークの手なら容易に片手で隠せるサイズのペニスへ、熱い弾力を知った。

「んっ・・・あっ・・・」

「どうだ?」

無意識のうちに足を広げ、腰をずらす。

彼の舌が、己のペニスに這わされる。

初めて口淫を知った時はただただ恥ずかしさばかりであったが、それも回を重ねるうちに違う感情が芽生えていた。

「もっと・・・」

「もっっと?もっっとなんだ?」

「もっと、して・・・」

「可愛いな、拓深は」

ニヤリと笑ったのだろう。

声音だけでもそれが伝えられるようのイスハークは、拓深のペニスを深く咥え込んだ。

強く吸いながら、口が上下に出入りをする。

後孔で男を受け入れるだけがSEXであった拓深が初めて知ったペニスへの快感。

それはなんとも刺激的で、与えられているのが彼であると思えばいっそ、耐えられない快楽となる。

「んっ・・あっ・・・あぁ・・・はぁ・・くっ」

「よさそうだな。可愛い声で鳴くじゃないか」

「ぁあぁ・・・」

生理的な涙が目尻から溢れた。

もっとしてほしい。

ここで絶頂を迎えたい。

言葉にしたくとも喉からせり上がるのは、とうてい言葉とは呼べない嬌声ばかり。

それでも拓深の内心は伝わったのだろう。

ペニスを咥えながら、イスハークは拓深の後孔にも触れる。

そうされれば、何に抗えと言うのか。

「あ・・・ぁっ・・・んっ」

快感を急激に登り詰め、絶頂を超える。

拓深はただただ荒い息を繰り返すまま、愛しい彼の口内へ、日々の性交により薄くか出ない白濁を放ったのだった。