蒼穹を往く歌声     21



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シーツに這い蹲る格好で、拓深は後からイスハークに突き上げられていた。

イスハークに口淫を施せたと喜んでいたが、彼に与えることが出来たのはそれだけである。

結局射精まで追い立てる事も許されず、後孔にペニスを突き立てられれば後はいつもの如く、ただ強い快感の波に押し流されるのに身を任せるばかり。

自分からは何一つ出来ず、力の入らない身体を抱き上げられ、後孔に刺激を送られるのみであった。

耳元では甘い睦言を囁かれ、全身にキスが施される。

SEXで気持ちが良いのはペニスやアナルだけではないとイスハークは教えてくれた。

ましてや痛みや恐怖を感じる対象でもなく、これは幸せな行為なのだと、初めて性行為を行ってから十年以上の歳月を経てようやく知る事が出来たのだ。

「あっ・・ぁあ・・・っンぁ・・・」

「拓深、可愛いぞ。だが、いくら良いからといってそんなに俺を締め付けるな」

「だって・・ぁ・・やっ・・・あぁ・・」

言葉にもならない嬌声が、止めようとしても喉から溢れる。

後を攻められながら扱かれているペニスは、イスハークの手の中でジクジクと蜜を滴らせていた。

腹に付くほど立ち上がり、そんな風に亀頭を弄ばれればすぐにも達してしまいそうで、だから止めて欲しいのだと思えど、口を吐くのは甘い吐息ばかり。

いやいやと首を振って見せてもイスハークは止めてはくれず、後から抱きしめる腕に力を込めては身体を密着させられた。

裸の背中に、同じく裸のイスハークの胸が当たる。

傷だらけで青や紫の痕が醜く残る拓深に対し、イスハークの裸体はとても綺麗であった。

左の大部分に施された刺青、鍛えられ引き締まった肉体。

彼の身体にも傷は沢山あったけれど、それは拓深の物のような弱者の証ではなく、むしろ戦い生き延びてきた男の勲章だ。

そんなイスハークの身体を見るのが好きで、その逞しい腕に抱かれるのも嫌いではないと感じている。

力強く包まれる腕の中は安堵感に満ち、全身を預けられる気がした。

人と触れ合い安心感を得られるなど、今までの人生に無かった事だ。

「やっ・・あぁ・・いす、はーく・・や。いっちゃ・・・あぁぁ・・」

言葉なのか吐息なのかも判断できないものを発し、拓深は喘ぎ喘ぎ絶頂を迎えた。

イスハークの腕の中で身体を丸め、そして彼の手の中に白濁を放つ。

息をするのも辛いそれは、連日の性交によりとても少量しか放出されなかった。

「っ・・拓深・・」

抱きしめられている彼の腕に一際力が込められる。

痛い程のそれを痛いと伝える前に、身体の奥を小さく何度も突かれるのを感じイスハークもまた高みを迎えたのだと知った。

息を乱したイスハークは、ペニスを拓深から引き抜かないまま、そして拓深を腕から離さないままベッドの上に横たわった。

「何度しても、毎日抱いても拓深は抱き飽きないな」

笑い混じりに言い、イスハークは拓深の髪を撫でた。

そういえば、拓深が頭を撫でられたのも、記憶にある限りではイスハークが初めてだ。

初めの頃は、頭に触れられると反射的に目を瞑り竦み上がっていたのだが、そんな拓深に何も言わずイスハークは何度も頭を撫でてくれたのである。

イスハークは決して拓深を殴らないし、頭を撫でられれば気持ち良いのだとも今ではよく知っていた。

「うん」

「なんだ?拓深もか?」

彼の言葉通り、この船に来た日以来拓深は毎日イスハークとSEXをしている。

そして拓深も今のところ毎回、イスハークとの行為に物珍しさを感じていた。

「うん。毎回、新鮮」

「新鮮、か。上手いだの激しいだのと言われた事はあるが、そんな事を言われたのは初めてだ。拓深は妙な事を言う時がある」

そう言いながらも、やはりイスハークは楽しげに笑った。

とっくにペニスは萎えているだろうに拓深から離れようとはせず、互いに汚れたままじゃれてくる。

「・・・妙な事・・」

奇を狙った事を言っているつもりはないというのに。

けれどイスハークだけではなくジーノにも同じ事を言われるので、やはり「妙な事」を言ってしまっているのだろう。

それは無知さ故か、異世界の思考の違いからか。

そう考えた時、ふと昼間のジーノとの会話を思い出した。

「・・・ぁ」

いくつかジーノに受けたアドバイス。

ジーノに言われた通りイスハークにねだってみれば彼はペニスに触れる事も口淫をも許してくれた。

ならば、もう一つジーノが言っていた事ももしかすると正解なのではないかと思えたのである。

イスハークに抱きしめられたまま、拓深は身を捩ると彼と向かい合う格好に身体を返した。

「どうした、拓深」

「あの」

彼の灰色の瞳がじっと拓深を見つめる。

口元の笑みとは違い至って真摯なそれを見つめ返し、拓深は唇を開いた。

「イスハークって、僕に惚れてる?」

「・・・」

「ごめん。違うよね。ジーノが言うから・・・」

無言のまま視線を降り注ぐイスハークに、やはりそんな事はありえないと早口で否定を続ける。

あまりにイスハークの瞳が、そしてその眼差しが綺麗で、こんな綺麗な人が自分に好意を寄せているなどあるはずが無いのだ。

馬鹿げた事を口にし気分を害したのではないかと咄嗟にイスハークから離れようとした時───身を返した事により軽く巻きつけられていただけのイスハークの腕が、拓深の身体を引き寄せた。

「またその男か。こんな時くらい別の男の名を呼ぶな」

「・・え」

「だがそんな事を言っても拓深には解らないのだろう。それに、今回ばかりはそいつに感謝しなくてはならないようだ」

「・・なに」

「あぁ。俺はそいつの言う通り、拓深に惚れている」

「・・・・・え」

イスハークの吐息が耳元に掛かる。

合わさった胸から心臓の音も伝わる。

こんなにも近い距離に居るというのに、それどころか自分から問いかけた事でもあるというのに、「まさか」という気持ちばかりが脳裏を駆け巡り、彼の言葉がすんなりと理解が出来なかった。