蒼穹を往く歌声     37



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優しくしたいと言った言葉通り、イスハークはいつも以上に丁寧に拓深の身体に触れた。

けれど拓深にしてみれば、それは嬉しさよりもじれったさばかりである。

胸や腹やペニスを撫でるよりも、イスハークが欲しい。

身体を解する必要性よりも、そこで生まれる快感などよりも、ただただ彼が欲しくて、最終的には拓深から足を広げねだった程だ。

まだ早いと言いながらも拓深の望みを叶えてくれたイスハークは熱い自身のペニスを差し込み、拓深はシーツの上で小さく震えた。

「あっ・・・イスハークっぅん・・・・」

「っ・・拓深、そんなにも、締め付けないでくれ」

「ごめ・・痛い?ごめん、でも・・・締め付けてる、訳じゃなくて・・っぁ・・どっ・・どうしよ・・・ン・・・」

腕はイスハークの首へ回し、閉じる事の叶わなくなった唇で息だけを繰り返す。

何をどうしよう、などと上手く制御出来ないまま、拓深は与えられる快感に耐えるしかなかった。

以前はこれを仕事にしていたというのに、イスハークとだけSEXを行うようになってからドンドンと下手になっているような気すらしてしまう。

情けない眼差しになりながらも謝罪を繰り返す拓深に、けれどイスハークはどこか満足げな笑みを浮かべると掠めるようなキスを施した。

「大丈夫だ。焦るな」

「・・・でも」

「可愛い、拓深」

「あっ・・・」

胸を合わせるよう肌を密着させ、イスハークは拓深の背を抱きしめる。

耳元に吐息を吹きかけられながら頭を撫でられれば、胸が切なく鳴った。

「いっ・・・イスハーク・・・」

「どうした?辛いのか?」

「違う・・・そうじゃ、なくて」

掠れ顰められた彼の声が、直接耳軸へ注がれる。

甘すぎるまでに甘いそれに、拓深は近い距離にある彼の面持ちを視点の定まらない眼差しで見つめた。

見慣れた灰色の澄んだ瞳。

その瞳が、大好きで。

吸い込まれそうなそこを見つめていれば、唇がぎこちなく動いた。

「イスハーク、あの・・・。好き」

今までは何となく感じていた感情。

彼に「俺が好きか?」と問われれば「そうだ」と返す程度でしかなかったそれを、今は自分から彼に伝えたいと思ったのである。

「・・・。あぁ、俺もだ。俺も、拓深を愛している」

合わせられた肌から感じるイスハークの胸の鼓動。

それがとても強くて、少し早くて。

彼をこんなにも近くに感じていられるのが幸せだと感じた。

イスハークの首へと回した腕に力を込める。

動きにくいだろ、と苦笑する彼の声すら心地良い。

SEXとは、愛した人と繋がるという行為はこんなにも気持ちが良いものだと教えてくれたのも彼だ。

他にもイスハークは拓深がそれまで知らなかった事を沢山教えてくれた。

きっとこれからも、多くを教え与えてくれるのだろう。

「イスハーク、動いて?イスハークで、いきたい」

「可愛い事を言うようになったな。───存分に味わえ」

触れ合うだけのキスを唇に落とし、イスハークは拓深の頭を抱えると律動を始める。

「あっ・・・うっん・・・あぁ・・・いっイスハーク・・・」

堪えようと思っても堪える事の出来ない嬌声。

体内を優しくも激しく刺激するイスハークのペニス。

まるでその形を覚えてしまっているかのような内部は、雄雄しい進入物を難なく受け入れてはそれを喜んだ。

「拓深・・・っ拓深、愛しているんだ・・・・」

「あっ・・・はっ・・」

僕も、とは拓深の唇から零れる事はなかった。

もうそのような余裕などありはせず、ただただ喘ぐばかりでけれどイスハークはそれでも尚、拓深の耳元で可愛いと囁く。

「やっ・・・あっ・・い、いっ・・・くっ・・」

「俺もだっ・・・・」

「あっあぁぁぁっ・・・」

身体の奥へイスハークの証が注がれ、二人の間で揺れる己のペニスも吐精を果たす。

「あっ・・ぁぁ・・・・はっ・・はぁ・・・」

「拓深」

荒い息を繰り返すしか出来なくて。

全身の力が奪われれば、拓深はぐったりとイスハークからも腕を放した。

激しい快感と満足感は、強い疲労感すら連れてくるものだ。

「・・・イスハーク・・・もう無理・・・」

「あぁ、眠れ」

瞼が重く、もう何もしたくはないと拓深は瞼を閉ざした。

けれど無意識のうちに動いた指が、それを捉えるとしっかりと手の中に握りこむ。

こうして眠られればとても幸せだ、と思った時には既に夢の世界へと飛び立っていた。

頭上で苦笑を浮かべたイスハークが片手を拓深に取られた格好で身体を清めてくれたのだと知るのは、数時間後の事だろう。